赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

体育祭後


「なんなの?あの黒尾先輩のギャラリーは。」


体育祭を終えた名前たちは、すっかり日常通りの部活を行っていた。
名前はボトルを手にしながら文句を言う。

部活対抗リレーでは、名前は力量をしっかり発揮したが運動部だけあってさすがの走りを専門にしている陸上部には勝つことはできなかったものの堂々の2位を制した。

しかし、名前は何よりグラウンドに入場した直後の「黒尾せんぱーい」という声の多さに怪訝そうにしていた。


「…クロ、モテるから。」

「…いや、確かにカッコいいんだけど…」

「…名前。」

「え?」


研磨に肩を叩かれ研磨を見ると指をさしている。
そちらへ振り返れば、にこにこした主将の姿があった。


「カッコいいとはどうも〜」


笑顔を強張らせながら名前は「研磨には勝らないですよ?」と言う。


「あれ。そうなの?」

「…。」


黒尾は研磨に首を傾げる。
研磨はすぐ顔を背けた。
彼の心の中ではおそらく「いたくない。」と言っているに違いない。


「そいや、来週の文化祭までに名前に一回着てもらうつもりなんだが…」

「…?何をですか?」


研磨はチラッと黒尾を見た。
黒尾も研磨を見ておりニコニコしている。


「…。」


嫌な顔をした研磨がそろりと立ち上がる。
その腕をガシッと掴んだ黒尾。


「えっと…?」


目の前の異様な光景に目をぱちぱちさせる名前。
黒尾が張り付けたような笑顔で言った。


「注文したメイド服が、届きました。」

「あぁ…え、一回着るというのは…?」


一体、どういうこと?


首を傾げる名前はだいたい察しがつき、顔が強張っていく。


「まぁ、試着だな。」

「…する必要ないじゃん。」


ぼそりと研磨がつぶやいた。
それに名前は苦笑い。


「あ、じゃあ!家に持って帰って試着してきます!」

「そうだな。じゃあ頼むわ。」

「はい。」


それだけ言うと黒尾は研磨を見て肩を叩いた。


「…なんか、今更だけど嫌だ。」

「え?何が?」

「名前が着るの。」


「絶対変な目でしか見ないじゃん。」と黒尾の背を見る。
名前もそれには薄々感じていたことだったため苦笑いをするしかなかった。

[ 25 / 88 ]
prev | list | next

しおりを挟む