赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

部室での会話


「クロ。」


部活を終え、部員たちが制服に着替えている。
黒尾もまた同様に制服に着替えていたところに、遅れて部室へ入ってきた研磨が声をかけた。

「ん?」と返事だけを返し、視線は手元を見ていた。
研磨はその隣で着替えを始めながら「名前から聞いたよ。お昼休みのこと。」と告げると黒尾が「あー。」とどうでもいい、とでも言うようにダルそうな返事をした。


「アイツさ…望月な。」

「うん。」

「顔だけのヤツなんだと思ってたら、違ったわ。」

「…クロは、顔重視なの?」

「だから違ったって言ったろ?」


研磨は制服のシャツに腕を通しながら黒尾と会話をする。
黒尾は着替えを終えネクタイを手にした。


「思ってた以上に一途で、良いヤツだったわ。」

「…それは、一途だったから、良いヤツって言ってるんだよね。」

「当たり前だろ。他はダメだ。特に俺に対する態度!」


研磨は黒尾を見て“たぶん、クロも嫌な態度取ってるんだと思う。”と心の中で思っていた。


「お前らの周りは、いい相手がいて良いでないの。」

「…?」

「望月に、小池だっけか?」

「…。」


小池という名前に、研磨は視線を落とした。
鋭い黒尾は「何、また告白でもされたのか?」と口角を上げた。


「名前が…小池さんに、言われたらしい。」

「お?知らないところですでに戦いが始まってんのか。」

「…。」


楽しそうな黒尾を研磨が一瞥すると彼は黙った。


「“彼女なら、もっとおれのこと見てあげたら”って言われたらしい。」

「はぁ?なんだそりゃ。名前ちゃんの眼中には研磨以外いねぇぞ。」


黒尾の言葉を耳にしながら荷物を片す研磨。


「あ、あと“もっとできる人なんだと思ってた”って、言われたらしい。」


黒尾はすでに着替えも片づけも終え研磨を待っていた。


「名前のヤツ、そういうところでは損だよなぁ〜。確かにある程度できっけど…できねぇことホントできねぇもんな。でも、できるところはズバ抜けてるがな。」


「まぁ結論、何とも言えないヤツだな。」と黒尾は笑う。
リュックを背負った研磨は部室を後にする。
その背を追うように黒尾も出た。


「あ、でも、ほんと運動神経いいよな。」

「名前、バレーしたらおれより上手くなると思うよ。」

「あー…いや、それは否定するぞ。俺。」

「なんで。」

「一応な。」

「…意味わかんない。おれ、名前にセッターしてもらいたい。」

「やめろ。透明人間の話思い出した。」

「…なんで?」


意味のわからない話を繰り広げながら、岐路につく二人だった。

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