赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

見下すのはやめろ


体育祭といえども、季節はまだまだ夏で暑い。
炎天下の元で汗を流しながら走る姿。

グラウンドにはクラス対抗リレーの練習をしている生徒もいた。


『ゲッ黒尾じゃん。』

「お。これはこれはバスケ部のキャプテンじゃないですか。」


走り終えたところにいた黒尾がバスケ部のキャプテンに声をかけられた。
名前は「バスケ部…」とジッとキャプテンの顔を見る。


「聞いたぞ〜お前のところ、2年でエースの望月が出るらしいじゃないの〜?」

『っ…お前ほんと望月嫌いな。』



「少なくとも好きではねぇな。」と、キャプテンの肩を組んで、黒尾がニタニタとした不敵な笑みを浮かべる。
その名前を聞いて、名前は「え…」と少し戸惑った。


「あれ、噂をすれば。」


校舎から出てきて、こちらへ向かってくる望月の姿。
どうやらバスケ部も今日練習をする様子だ。

なかなか走らない黒尾を不思議に思ったのか、夜久と海がこちらへ歩み寄ってきている。

名前は夜久たちの元へ走って向かい、この場を一刻も去ろうかと考えた。
その時、背後から「苗字も部活対抗リレーでんの?」と声をかけられ、がっくりと項垂れた。


「う、うん…」


苦笑いをして頷く名前。
その隣、後方には自分たちのキャプテンの肩を組んでいるバレー部の主将の姿。

望月は張り付けた笑顔を向けた。


「どうも。黒尾先輩。」

「どうも。望月。」


以前から望月を敵視している黒尾。
生意気で嫌な奴という認識でいる黒尾は、望月に笑顔を向けるどころか、敵意しか向けていなかった。


「バレー部、大丈夫なんですか?」

「ん?何が?」


望月の問いかけに黒尾が柔らかいトーンで返事をする。


「部内にカップルがいたら、試合に支障出たりするんじゃないのかなぁ、と思いまして。」

『おい、望月。』


その言葉に、ドキリとした。


黒尾はバスケ部のキャプテンの肩から腕を離すと、静かに望月に一歩歩み寄る。
様子を伺いながら名前の元へ来た夜久と海。



「それは…うち(音駒高校バレー部)がそんなことで弱小になるようなチームだって思ってます。ってことだよな。」



黒尾の周りから黒いオーラが放たれているのを見た夜久が慌てて黒尾を抑えにかかる。


「おい、黒尾っ相手は後輩だぞ。」

「望月さ…バスケ部のエースはバレー部のエースと同等だと思うなよ?」

「?」


望月や止めに入る夜久ですら、黒尾の意味のよくわからない言葉に首を傾げた。
黒尾はニヤリと口角を挙げた。


「そりゃ周りから見ればバスケ部のエースってのは、得点を稼いでくれる目立つ奴のことを言うし、そりゃかっこよく見えるだろうよ。」


「でもな。」と望月を見る。


「エースでもないうちのセッター(研磨)を見下すのはやめてもらえませんかね。現に、名前がお前より研磨に惹かれたってのが何よりも証拠だろうが。」


黒尾の言葉に、望月は苦い顔をした。
周りで聞いていた名前や夜久たちは黒尾を見て固まった。

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