もやもや
確かに、そうかもしれない。
研磨の言葉を考えて、もやもやしたままの胸を抱えながらグラウンドに出る。
お昼休み、研磨に伝えられた部活対抗リレーの練習に来ていた。
すでに体を軽く動かしている3年生の姿が見える。
名前の姿に気づいた夜久が手を挙げた。
“付き合う前は、もっと、いろんな話してくれてたなって…最近、思う。”
それも、その通りだと思う。
夜久たちの元へ歩み寄りながら、ぎゅっと握った拳。
研磨に、バレてるんだ。
小池さんのことで悩んでるの。
でも、研磨に言っちゃうと…なんか小池さんに負けた感じがして嫌というか…でもでも、研磨は話してほしいと思ってるってことだよね。
確かに、私が逆立場だと、話してほしいだろうな…。
それは、それだけ研磨が好きだからだけど…
って、ことは、つまり…
「ん?どうした?名前。」
「?」
ピタリと歩む足を止めた名前を不思議そうに見る黒尾と海。
夜久が名前の顔を見て「にやにやしてんぞ。」と口角を挙げた。
「ふふっ…」
「珍しいな、こんな上機嫌な苗字。」
研磨も、それだけ私のこと好きって、とっていいよね?
黒尾は夜久に「研磨だよ。」とボソリと呟く。
海も「だろうな。」と微笑む。
「なぁに言われたんだ?」
「え。言われたって…?」
「研磨にだよ。」
「えっと…付き合う前は、もっと、いろんな話してくれてたなって最近思う。って言われました。」
ケロッと言ってのけた名前のそれに、3人は「「「は?」」」と声を揃えて固まった。
名前は首をかしげて、「何ですか?」と聞く。
「いや、それ言われて、にやにやできんの?」
「絶対、お前嘘だろ、それ。」
夜久と黒尾に疑われる名前。
しかし、彼女は「本当ですけど…」と真面目な顔をして言ったため、3人は顔を見合わせて「よくわからないカップルだな。」と苦笑いをするしかなかった。
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