赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

自覚


翌日、お昼休み。
クラス対抗リレーの練習が行われた。

名前の視線の先には、3組の小池の姿。


―小池さんのことだけど…告白、された。―


「…。」


自信がないことが、これほど不安にさせる。

以前、研磨が自信がなくて私と付き合うことを躊躇っていたのが…今、とてもじゃないけどわかる。


あの時、私は研磨にありったけの気持ちを伝えた。


…そういえば、最近研磨とあまり話してない気がする。


部活ではいつも通りだし…というか、私から話しかけないと話してくれないんだよね…研磨から声をかけてくれるときは、大体用事があるとき。


「名前ー!」

「あ、今行く!」


ボーっと座りながら考えていた彼女をクラスメイトが呼ぶ。
それに駆けていく名前の背を、小池が見ていた。



「あの、苗字さん。」

「…はい。」


練習が終わり、着替えを済ませたらしい小池が彼女に声をかける。
名前は手にリボンを持った状態で小池を見た。

真っすぐ、見据えられる視線には読めない感情が隠れているようだった。


「孤爪くんの彼女なら、もっと見てあげたらどうでしょうか。」

「?」


なにを言ってるんだろうか、と思った。

もっと見てあげたらって…いつも私は研磨以外見てない。

…部活の時はみんなを見てるけど…。

部活の時でさえも彼だけを見てろって…そういう問題では、ないよね?


眉間に皺を寄せた名前に、難しい顔をする小池。


「最近、教室にいるとき…何か考えているように見えるんです。」

「…。」


教室という単語に、名前は視線を落とした。


さすがに、クラスメイトほど彼と同じ時間は共有できていない。
そんなこと、百も承知だ。


「…今、クラスメイトよりも同じ時間を過ごせていない、みたいなこと考えませんでしたか?」

「っ…」


…なに、この人…。
黒尾先輩みたい、心読まれてる!


一瞬の名前の表情の歪みを見て、フイッと小池は視線を逸らした。


「あなた、彼女でしょ?しかもバレー部でマネージャーもしてる。それなのに、クラスメイトより同じ時間を共有できてないなんて思うのは間違いだと思います。」


更衣室の空気は、いつの間にか張り詰めたものと化していた。
小池は「もっとできる人なんだと思ってました。」とだけ言って更衣室を出ていく。


ぎゅっとリボンを握りしめるしか、できなかった。

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