赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

くだらないやり取り


「名前に、またバレてた。」

「何がバレたんだ?」


黒尾の隣でネクタイを結ぶ研磨。


「小池さんからの告白、黙ってたのには…理由があるんでしょって言われた。」


黒尾は手に持ったネクタイをシュルっと首へ巻いた。


「いい彼女じゃねぇの。」

「…なんか…。」

「ん?」


研磨はネクタイを結び終えると手を力なく下した。


「必死、なんだけど…」

「は?なにが?」


黒尾が眉間に皺を寄せる。


「よく、わからない気持ち。」

「?まぁ、いい傾向ではあるんじゃねぇの?」


研磨は難しい顔をしてため息を一つついた。


「名前さんって、体育祭何に出るんすかね?」

「…なに、突然。」


リエーフが黒尾と研磨の間に割って入ってきた。
研磨はダルそうに荷物を鞄へ詰め込む。


「だって運動神経いいんでしょ?」

「そうだけど…だからって何に出るか気になった理由にはならないと思うけど…。」


研磨のいつになく素っ気ない言葉に、黒尾が口角を上げていたのを彼は知らない。


「あ、そういえば、名前に練習の話すんの忘れた。」

「…部活対抗リレーっすか?」

「おう。」


リエーフと黒尾の話を片耳に研磨はジャージを鞄に詰める。
その時、リエーフが手にしていた携帯が鳴る。
それと同時に黒尾の鞄の中でも振動がした。


「あ、木兎さんだ!」

「木兎?」


どれ、とリエーフの携帯画面を覗き込む黒尾。
その顔が一気に呆れ顔に変化した。


「ちょっと貸せ。」

「えぇっちょ、黒尾さん何するんスか?」


研磨は黒尾の持つ携帯、リエーフの携帯の画面を覗き込んだ。
それは第三体育館で練習していたメンバーでのグループメッセージだった。

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木兎《音駒って再来週の日曜に文化祭あるんだろ?行ってい?!》

リエーフ《お前目立つからダメ。》
リエーフ《って言ったところで、どーせ来んだろ。》

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黒尾が慣れた手つきで簡単に送信してしまった。
リエーフが隣で「黒尾さんのアカウントで言ってくださいよー」と嘆いている。

研磨は画面をじっと見つめていた。

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木兎《?!》

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黒尾がニヤッとした。


「まさかリエーフから俺口調になって返ってくるなんぞ、思ってなかっただろーな。」

「…文字だけなのに…向こうの反応がわかる。」


研磨の言葉にリエーフも画面を覗き込む。


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木兎《ちょっと待て、誰だお前!》

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研磨の脳内ではメッセージを言っている、動く木兎がハッキリ浮かんでいた。
黒尾はニヤニヤしながら手慣れたように画面の上をスライドさせる。


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リエーフ《誰かなー?》

木兎《くっそー!音駒のヤツだってことはわかっててもいっぱい居すぎてわっかんねぇ!》

リエーフ《隣でうちのセッターがとんでもなく呆れた顔してるぞ》

木兎《なに?!》

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「ねぇ、コレ…いつまで続くの?」


研磨の一言に黒尾が、「まぁ、見てろ。」と口角を上げた。

その、直後のことだ。


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赤葦《木兎さん。どこでなにやってんですか。》

木兎《げっあかあし!》

赤葦《携帯がやけにうるさいなぁと思ったら、ここにいたんですね。》

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「よし、帰るぞー。」


黒尾の一言で部室から人がいなくなる。

それから、返事が返ってくることはなかった。


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