赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

告白


「…。」


ジーッと見つめる名前の視線の先には…


「研磨ー…っておい、逃げるな。」


黒尾に捕まった研磨の姿。
名前の横顔を見つめながら声をかけるのは夜久だ。


「…苗字さ、最近変じゃね。」


「え…」


夜久に「どうしたよ。」と問いかけられた名前は夜久から視線をそろっと外した。


「研磨のクラスのリレーメンバーに、綺麗な女の子いたの覚えてますか?」


小池のことを気にしていた名前は夜久の隣に腰を下ろすなりそう問いかけた。
夜久は「いや、覚えてねぇな。」とタオルで汗を拭う。


「小池さんって子がいるんですけど…」

「あぁ。あの美人。」


名前は覚えていたらしく、夜久は顔を拭いていたタオルを勢いよく下した。


「あの子、なんか苗字のことライバル視してるよな。」

「わかりますか?」


「おう。張り合ってんのが見てたらわかる。」と今度はボトルに口をつける。
そんな夜久の隣でため息をついた名前は研磨を見た。


いるはずの研磨の姿がない。


あれ?と思った、そのとき。



「名前。」

「!!」


背後から声をかけられた名前は肩を揺らした。
勢いよく振り返る名前と夜久。


「おま…びっくりしただろー。」

「え…すみません。」

「いや…いんだけど…どうした。」


夜久の声にふいっと視線を遠くへ向けた研磨が「名前と話し…」と言いにくそうに口を開く。

夜久はニヤッと不敵に笑うと名前を見た。


彼女は「う…ん。」と何とも言えない様子で立ち上がった。
トボトボと体育館の端に歩みを寄せた二人。


研磨が振り返ると「あのさ…」と視線は合わないまま口を開いた。
名前はあまりいい話ではなさそうだな、と雰囲気で察した。



「名前に言ってないことが、ある…んだよね。」

「…。」


表情を伺うように、ちらっと視線を向けた研磨。


「うん。」


名前はその姿を見て、胸元をぎゅっと握りしめた。


「小池さんのことだけど…」

「…うん。」


名前は視線を下へ落した。
まさか、ここで別れを告げられる可能性も無きにしも非ずかと予想がどんどん悪い方向へ向かっていく。

それもそのはず、目の前の彼はなかなか口を開こうとしないのだから。


「…研磨?」


声をかけると、研磨は顔を名前からさらに逸らすと「…された。」と小さな声で何か言葉を発したのがわかった。


「え?何て?」

「…告白、された。」


その言葉を聞いて、「え。」と固まる。


「…もう、結構前の話になるけど。」

「な…なんですぐ…」


そこまで言って、名前はやめた。

“なんですぐ言ってくれなかったの?”なんて、いくら彼女でも、彼の出来事をすべて言わせることはできない、そう思ったからだ。


ぐっと言葉を飲み込み、顔を上げる名前。


「…そうなんだ。」

「…ごめん。黙ってて。」


俯く研磨を見て、柔らかい表情をした名前。


「黙ってた、理由がちゃんとあるんでしょ?」

「え…。」


研磨は顔を上げた。


「へへ。」

「…。」


何も言えず、視線をフイッと逸らした研磨はほんのり頬を赤くした。


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