さすがうちのマネージャー
トボトボと体育館の端へ向かっていると、ドアから黒尾が入ってきた。
「よっす。名前。」
「こんにちわ。黒尾先輩。」
「…落ち込んでねぇか?」
ニタニタ嫌な顔をして笑う黒尾。
彼は恐らく、リレーを見ていたことだろう。
言われると身構えていた名前は素直に「落ち込んでますよ。」と言う。
シューズを履きながら黒尾が「まぁ、人には欠点も必要だぞ。」とフォローを入れる。
名前はムスッとして「当日は120%発揮しますよ。」と言う。
それに「やめとけ。お前のことだからもっと失敗するに決まってんだろ。」と意地悪なことを言われる名前。
「颯爽にトップ走り切ったな、と思ってたら、お前ほんと期待を裏切らねぇな。」
ケラケラ笑う黒尾にムッとする名前。
「さすがうちのマネージャーなだけある。と思った。」
「それ、貶してますよね?褒めてないですよね?」
怒っている名前を見てまた笑う黒尾。
「黒尾先輩のことちょっと見直してたのに…残念です。」
「え?いつ?何かしたっけ俺?」
全く彼の知らない間に起っていた一部始終は、夜久と研磨の手によってすっかり収められていたため黒尾は驚く。
まさか、嬉しくて泣きました、なんて言えるわけなく…
「いえ、別に。」
「…つめてぇなぁおい。悪かったって。」
立ち上がった黒尾を横目に籠を運ぶ名前。
そうして今日も部活が始まるのだ。
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