赤いリボンの猫-続編-[完結] | ナノ

宣戦布告


彼女たちを見ていた誰もが、息を飲んだだろう。

2年4組は、もはや最強と言っても過言ではない曲者揃いだった。
1番手はバレー部マネージャーで容姿に目を引く名前が走る。
2番手は名前といつも上位を競い合っている運動神経抜群の剣道部の子が走る。
3番手は陸上部の男子で短距離ではクラストップ。
アンカーは我らが望月様というバスケ部エースの好青年イケメンだ。

知る人ぞ知る者たちばかりの選抜に、同学年の他クラスは内心内気になっていた。


だが、3組の第一走者の小池だけは違っていた。


「苗字さん。」


「え?」


聞いたことのない声で名前を呼ばれ、振り返る名前。
目の前には小池がいた。


うわ…間近で見るとやっぱり美人…。


少し視線の高い彼女を、そんなことを考えながらじっと見つめる名前に、小池は静かに耳打ちした。


「孤爪くんは、私の好きな人なんです。」


「…は…」


身を離した小池は、固まる名前に微笑むと「負けませんから。」と宣戦布告した。


おそらく、研磨と付き合っているということは知っている様子だが、名前は初めての感覚にモヤモヤと焦りを見せていた。


小池は美人だ。
体育委員だってしていて、おそらくバスケ部なだけあって気さく。
うちでいう黒尾のような人だ。

黒尾がモテるように、彼女もモテる。


…研磨のこと、やっぱり好きだったんだ。


メッセージのやり取りを見た時から、あまり気にはしないようにしていたものの…やはり、彼女の気持ちは自分が考えていたものであった。


でも、今は…研磨は私の好きな人。
自信はまだないけど…研磨の好きな人も私だって…思…って…る…。


だけど自信がやはり足りず、テンションが急激に下降した名前。


2年3組の教室から二人が何やら話している様子を見た研磨は、眉間に皺を寄せた。
研磨は、部員たちには小池からの告白が知られているものの、彼女の名前には話していない。

どこか、嫌な感じがした。
上からだが、名前の様子がおかしいように見えた。


…言っとけばよかった。


そうすれば今これほど嫌な気持ちになることはなかったのに、と溜め息をつき後悔した研磨だった。


グラウンドではレーンについた第一走者たち。
いくら部活には入っていようとも、マネージャーの位置である名前。

他のクラスはもちろんすべて運動部員。


2年生の練習風景を見ていた夜久が難しい顔をした。
いくら名前が運動神経がいいとはいえ、みなクラスの代表で出ている。

全学年で見たってマネージャーは彼女一人。


でも、よくよく考えればマネージャーをしていなくても彼女は恐らくこの場所にいたんだろうな、と考える。


「…なんも心配ねぇか。」


ふっとそう呟いた。



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