Happy Birth Day
Present for you.


じーっと、天童の見つめる先を見つめる彼女。
その視線の先を見て、ちらっと彼氏を見上げれば音がしそうなほどに目が合う。


「ん?」
「なんでもない」
「ウソ」
「……」


目をパチパチさせた天童が、名前の顔を覗き込む。
ふいっと逸らした瞬間、耳元で言われる。


「見てないよ?」


名前は花に、そのことを話した。
モヤモヤして、腹が立って…仕方ないのだ。


「それ、見てたんでしょーが」
「…そんなに、短い方がいいのかな…」


天童の視線の先にいた、女子生徒を思い出す。
特別美人、可愛い顔立ちをしていたわけではないが、ただ…足がとても綺麗だった。
それは、スカートを短くしていたが故に際立つもの。
名前はその子より短くはない。
校則に則っているから。


「短くしたら?」


花がそう言っている間に、名前はすでにスカートを折り終えていた。

「やっぱり天童にはもったいないって言いたいけど、天童のためにしてると思うと何も言えない、悔しい」
「次移動だよ、花」
「はい、行こうね」

名前に手を引かれながら教室を出る花。その時、ちょうどドアの真ん前に立って話していた男子数人がこちらを見ていた。

移動先の教室に入ってきた名前と花をいち早く見た天童。
んー?と目を凝らしたり、細めたりしていたところにチャイムが鳴り響いた。



時は放課後。


「ちょっと来て」


ぐっと突然腕を引っ張られ、身がよろける。
部活に行くはずの天童に腕を引かれている現状に名前は眉間に皺を寄せた。


「天童?部活は?」
「まーだ間に合うから!それよりさぁ…」
「!!」


背からの問いかけにくるっと彼女と向き合えば、そっと腰に腕を回した。
ビクッと身を強ばらせる名前を、じっとりとした目で見る。
「なんでこんなことしてんの?」と小首を傾げれば、腰から太腿にかけて手を滑らせる天童の行動に目を見開く名前。


「っ…やめて…」
「理由言ってくれたらネ」


早く言えよと催促されるかのように、やらしく動く手を掴むと、キッと睨んだ。


「天童が短い方が好きだから…」
「…え?ナニ?オレのせい?」


首をかしげながら追い詰めるように天童が歩み寄れば、背中がヒヤリとした。
壁だ。
逃げ場を失くしたところで、彼の手が頬を撫でる。


「見てたでしょ?短いスカートの子…」
「え?そうだっけ?」
「そうだよ!だからわざと短く…」
「へぇえ…俺のせいなんだネ?じゃあいーや」


え?


髪をかき揚げ首筋に顔を埋める天童に、慌てて肩を押す。


「ちょっ…」
「妬いた?名前ちゃん、ヤキモチ?」


目をパチパチさせまた小首を傾げる天童に、腹が立つ。


「それは、否定しない」


はっきり言うはずないと思っているはずだから、はっきり言う。
そうすれば、天童はきっと不意をつかれたような顔になるに違いない。

そう思っていたが、やはり予想は外れる。


「へぇ。もっとヤキモチやいてくれていーんダヨ?」


ニヤニヤと企んだ笑みを浮かべながら見続けてくる目の前の彼に、腹が立つ一方だったが。


「!!」
「仕返し」


屈んで意地悪をしている間ほど油断している彼を知っているので、不意打ちキスをかました名前は満足そうに笑った。


-END-

短いスカートがいい?

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