今日もまた視線の先には、黒尾がいる。
見ていると、彼はふと違う方向を見た。
たぶん、黒尾は、違う女の子が好き。
名前はため息を一つつく。
その途端「でっけぇため息つくなよ。幸せ逃げるんだぞ。」とクラスメイトに言われた。
一方、黒尾の視線の先には、名前がいた。
いつも名前はクラスメイトの男子と話している。
それはもう楽しげに。
「…俺にはあんな顔したことねぇのに。」
「妬く前に告りゃいいだろ。」
机に項垂れ呟く黒尾に、夜久がニッと笑う。
その顔を見ながら、「お前とは違うんだよ…。」と言えば、身を起こした。
「でもさ…」と夜久が何かを言おうとした時、彼の目の前を今名前を出そうとした彼女が通って行った。
黙り込む夜久を不思議に思った黒尾が顔をそちらへ向ければ、名前が「黒尾。」といつもの様子で声をかけてきた。
少し驚いた彼は視線を彼女から逸らした。
「アイツはもういいのか?」とぶっきらぼうに言う。
夜久は静かにその姿を見て笑う。
名前は「うん。それより黒尾と話した方が楽しい。」と言いながら彼の前の席に腰を落とす。
黒尾は「そんなこと言うけど楽しそうな顔しねぇだろ。」とハッキリ言う。
名前は眉間に皺を寄せるや否や首を傾げ
「楽しそうな顔?…黒尾だって他の女子と話してるときは楽しそうな顔してるじゃん。」
ふいっと顔を背けた彼女に夜久は「おぉ…」と関心する。
こいつら…お互いがお互いの事想ってるの気づくんじゃ…
と期待した矢先、黒尾が
「ヤキモチかぁ?」
とニヤニヤとしながら、目の前の彼女に問いかけた。
名前は黒尾を見るなり立ち上がり
「だったら悪い?」
顔を僅かに赤くして、そのままその場を立ち去る。
見ていた夜久も、もちろん言われた黒尾も絶句だ。
「…え…アイツ好きな人…」
「お前だろーが。アイツがどれだけお前のこと見てると思ってんだよ。」
「ずっとだぞ。」と言う夜久。
黒尾は今までの彼女の姿を思い出し、「いや、でも俺が見る時は絶対違う男と喋ってたぞ。」と苦笑いをする。
ため息をつくなり、夜久がドアを指さす。
「追いかけろ。今そんなことどーでもいい事実だろうが。苗字が妬いたって方が何より真実味がある今だ。」
「そっちの方が重要だろうが。」と黒尾を見る。
夜久の言葉に納得した黒尾は椅子から立ち上がるなり、教室を出ていく。
「恋のキューピットだな、俺。」
次教室に現れた二人は、お互いの気持ちに気づいた時。
-END-
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