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役立たずの手袋
「うぅ…寒っ」

身を震わせながら、体育館を出る部員たち。
外には現在進行形で降り続けている雪が一面に積もっていた。


「うおー!雪が来た時より積もってるー!」


そう言って飛び込もうとしたリエーフをガシッと掴み阻止したのは黒尾。


「着替えてからにしろ。」

「ハイ…」


大人しく部室に向かって歩いていくリエーフの後を追うように研磨と黒尾も歩みを進めた。


着替えを終えた黒尾と研磨が部室を出てきた。
目の前で、繰り広げられているのは見るからに寒い光景。


部員たちが雪合戦をしていた。
その中には、彼女である名前の姿も見られる。

研磨は「無理…」と呟く。
黒尾は部室に鍵をかけると、その呟きの訳を見て苦笑いをする。


「アイツら元気だな…」

「…子供は風邪の子。」

「まだまだ子ども、ってか?」


「お前の彼女もいるけど…」と付けたした黒尾に「楽しそうだから、いいんじゃない?」と答えた。





「うぅ〜冷たかった〜!」


部員たちと雪合戦した後、研磨と帰る名前。
びしょびしょに濡れた手袋を付けている彼女だが、もはや手袋の意味を成していない。


「手カチカチ…」

「当たり前じゃん。自業自得。」

「うぅ…」

「…。」


手袋を外し、鞄の中から袋を取り出すと、それに濡れた手袋を入れた彼女。
手と手をこすり合わせながら必死にてを温めている。

その様子を見て、仕方ないな、と研磨はずっとポケットに入れていた手で彼女の手を握る。


「冷たすぎ。」

「あったかーいっ」


両手で研磨の片手の熱を求めて握りしめる彼女を見て「手袋、使う?」と問いかけるも「ううん。研磨と手つなぎたい。」と言う。

その言葉を聞いた研磨は嫌な顔をする。


「寒い無理…」

「でも研磨は繋いでくれるよね。知ってるよ。」

「…ハァ。」


ため息を一つつくも、彼はもうどこかで“ま、いっか”と思っていた。


-END-
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