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小さな唇白い吐息
真冬、外は極寒と言っても過言ではない。
辺りには雪が降り積もり身震いをする。

学校からの帰り道、岩泉と帰宅途中の名前はマフラーに顔の半分を埋めて話す。


「及川に『岩ちゃんが最近イライラしてるんだよね、名前ちゃんどーにかして!』って言われたんだけど…岩泉がイライラしてるのは及川のせいでしょ?」


真っ直ぐ前を向きながら怠そうに目を細める。
岩泉は眉間に皺を寄せた。


「アイツ勝手にそんなこと…」

「挙句には『名前ちゃんと岩ちゃん最近会ってるの?キスした?!』とか聞いてきて…」


「「余計なお世話だ」」


「って…言った…やっぱり、そう思うよね!」


岩泉と思ったことが被り、フッと頬を緩ませた名前。
岩泉も同様だった。


「まぁでも会えてなかったのは確かだな。」

「そうだけど…」


「恋人事情探らなくたっていいじゃん。」と文句を言う名前。
どこか可愛くて自然と彼の口角は上がる。
視線を落とせば、彼女のマフラーに隠された口元から僅かに白い息が漏れる。

視線を感じた名前が顔を上げて「岩泉?」と名前を呼んだとき、彼女の肩を掴む。

見えた隙をついた、罠。


「え…んっ…」


驚いた目と、紅く染まる頬。
愛しさのあまりもう一度口付ければ彼女はそれに応えようとする。


…ずりぃな。


甘いキスを繰り返しているうちに、彼女の手に力が入る。
それを合図に、岩泉は唇を離した。


「え、もう、終わり?」


その言葉は、名前が感じている物足りなさを表している。


「あんま…」

「?」


岩泉は彼女を胸の中に入れると小さく囁く。


「可愛いこと言うなよ。」

「っ…」


ドキッとしたその言葉。
名前は、どう反応すればいいのかわからず、ただ彼をギュッと抱き締めた。


「及川に言っとく。お前の助言のお陰で可愛い名前が見れた。って。」

「え、言うのそれ?絶対私が被害被る…やだ。」


-END-
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