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チューしたいギューしたい一緒にいたい
同じクラスの、天童覚。
自分の机の上に座ってクラスメイトと何か楽しげに話している。
彼が動くたび、揺れる髪。

ふわ…ふわ…って。

視線を下ろせば、彼の横顔。
緩く結ばれたチェックのネクタイがゆらゆら揺れる。


ボーッと見つめていた名前。
いつの間にか、目の前に彼の姿があった。


「名前ちゃーん?」

「天童…」

「お熱い視線に誘われてやって来た覚くんダヨ。」


それだけ言うとストンと彼女の前の椅子に座る。


「で?」

「っ…」


ぎゅるっと、大きな目を向けたと同時に顔も近づける天童。
急なことにドキンと胸が高鳴った。


「かあわいーねぇ名前ちゃんは〜」


ふざけた口調でそう言うと、天童はヘラヘラして身体を揺らす。
ふわりふわりと目の前で動く髪に手を伸ばした。


「ん?」

「…触りたい。」

「え?!」


天童は目を見開いたと同時に身を引く。
首を傾げる名前にストップと右手を出した。


「えーっと…良いように理解していいのかな?」


天童は首を傾げる。
名前も首を傾げた。


「天童の髪、フワフワしてそうだなぁと思って。」

「え…ふわふわしてるわけないよ。」


「お風呂入ったら俺髪ぺちゃんこダヨ?」と言う天童に思わず笑った。

「名前ちゃん最近良く笑うようになったね。」と言われて気づいた。「そうかもしれない」と。
恐らくこの目の前の彼のおかげなんだろうけど…と思う。

首を傾げる天童の髪がまたふわっと揺れた。
なんか…可愛いと感じてしまう。


「天童。」

「ん?なぁに?」


今度は反対に首を傾げる。
また髪が揺れるのを見て、可愛いなと思う。


「なんか、抱きしめたいな。」

「え?」


少しの間が空いた後、天童は大きな目をさらに大きくした。


「エェッ?!」


驚く天童に「ちょっと来て」と腕を引っ張られるがまま教室を出た。
無言でついて行った先は屋上。
人が、誰か訪れたとしても気づかれないであろうそこに身を潜めると抱きしめたかったはずが抱きしめられた。


「私が抱きしめたかったのですけども…」

「口調がおかしいよ、」


そう言われてそっと身を開けば頬に手を添えられる。
つられるように顔を上げれば少し屈んだ天童がキスを落とす。


「名前ちゃんさ、不意打ちはやめよう?」

「覚だからいいでしょ?」

「!ほらまたそうやって不意に名前で呼ぶっ!」


目の前でくすくす笑う彼女に天童もさすがに翻弄される。


「あー、もうずっと一緒にいたい。傍に置いておきたいっ。可愛い。好きだよ?」

「一気に言い過ぎ…」


どれに何を返そうか考えてる間に次の言葉が降ってくる。
名前は相変わらず抱きしめられながら言った。


「まずものではないので置いておくことは出来ないと…」

「かたっ!そんな真面目な返答望んでないよ、俺。」


また笑う彼女の視線が天童の髪に止まる。


「天童…」

「ん?ってか、天童に戻ってるしー…」


屈んでと手招きされ、身を屈める天童の髪に触れた。


「…なるほど、根本を固めてるから毛先ふわふわなんだ。」

「え、そこ知る必要あった?」


そう言いながら腰に回った天童の腕に力が入るのがわかった。
彼の腕を掴めば不敵に笑った。


「チューしたい名前ちゃん。させて?」


また髪が揺れたのを見て、「可愛い」と言えば黙らせるかのように口を塞がれた。


-END-
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