「名前。」
いつも、部活が終わる時間が合うと、どちらかが門で待っていることが多い。
それが、付き合い始めてから恒例となった。
お互い部活をしていて、普段学校で会えるか会えないかくらいの距離。
しかし、帰る時間が合えば、必ず会える。
その日に、私はいつも喜びを感じていた。
「研磨、最近ゲームしなくなったね。」
いつも歩きながらゲームをする彼の姿を、最近は見なくなった。
言ってみれば、彼は「名前と帰る日くらいは…」と言う。
その言葉だけで、胸がいっぱいになる。
「…ねぇ。」
「ん?」
学校から駅までの短い距離。
研磨が手を差し出す。
「手、」
それだけしか言ってくれないけれど、こうして差し出してくれることだけで十分だ。
そっとその手に自分の手を重ねると、研磨はぎゅっと握りしめてくれる。
「ふふ…」
「何?」
「ううん。研磨って、不器用だよね。」
「今更?」
「知ってるけど…改めて思った。」
嬉しそうではないその顔を見て名前は頬が緩んだ。
言われると恥ずかしいんだろうな、と。
「こういう恋の形もいいよね。」
「…手、繋いでるだけだけど?」
なんていう研磨に「だって研磨不器用じゃない?」と話す。
「だから、こうして手、つないでくれるだけで“好き”って言われてるみたいで、嬉しい。」
ヘラッと笑う彼女を見て視線を逸らす研磨。
「言ってないし…」
「あれ?そうなの?」
「……そんなことないけど。」
ニコニコ上機嫌な彼女の姿を見て、研磨は思う。
「手、繋ぐくらいで…いいんだ。」と。
-END-
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