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分かりにくい君のタイプ
2年3組の教室の一角。
研磨の前に座って名前は雑誌の上を指さした。


「見て見て!この人っカッコ良くない!?」

「…。」


じーっとそこに写っている男を見る研磨だがよくわからず「よくわからない。」とだけ答える。
名前は「やっぱり研磨にはわからないか…」と納得している彼女を目の前にため息をつく。


じゃあ、聞かないでよ。と。


「じゃあ、研磨はコッチの人とコッチの人、どっちの人がいい?」

「…。」


ゲームをさせてよ、とは言えず、彼女の問いかけに視線をまた違うページの開かれたそこに向ける研磨。

大きく見出しには“現役女子高生シンガーソングライター”と書かれており、知らない顔をした二人が載っている。


「…コッチ。」

「…そっか…研磨はコッチ派なのか。」


そう言ってジッとその女子高生シンガーソングライターを見つめる名前。


「この人同じ年じゃん…」

「…。」


名前の目に飛び込んできたのは端に小さく書かれたプロフィール。
「どこの学校の子かな〜?」と問いかければ、研磨は「さぁ。」とだけ答えた。


「ねぇ、研磨。一つ聞いてもいい?」

「…。」


視線をチラッと彼女へ向けたがすぐ手元のゲーム画面へ落とし「名前のことならいよ。」と返事をする。

その言葉に顔を赤くする名前。


「ん〜…じゃあ、私のタイプってこの子に似てる?」

「え?」


何言ってるの?と思わず視線を上げた研磨だったが、雑誌の上、先ほどどちらがいいか選べと言われ、選んだ女の子を指でさしている名前。


「…似てないんじゃない?」

「なっ…じゃあ研磨の好きなタイプってどんな?」


「一つだけって言った。」と返す研磨に名前は「二つだけ!」と訂正を申し立てる。
仕方ないな、と折れるのはいつも研磨。


「それ、聞かなくても、名前が一番わかってるでしょ?」

「え?わからないから聞いてるの。」


ねぇ〜と研磨に詰め寄る名前に、研磨は身を離しながら言った。


「名前が、タイプ。」

「え?」

「…そのままの意味。」

「…えぇ…」


名前は机に項垂れた。


「自分なんて一番わからない(タイプ)じゃん…」


-END-
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