企画小説はこちら | ナノ
箱の中身はお楽しみ
部活を終えた研磨がいち早く部室に戻って電気をつけた。
目の前、ど真ん中に置かれた、とても不自然な箱。


「…。」


ハタっと止まる研磨。
ジーッとその箱を見るなり、警戒するように身を縮ませて自分の荷物に手を掛けた。


もう一度、ジーッとそれを見ると身を寄せて座り込んだ。


「…。」


研磨は考えていた。
誰かが誕生日とかで、誰かが驚かせるために置いてる、とか。
そもそも不審者が入れるところではない、むしろこんな所にあえて入ってきて爆弾を仕掛けていくなんて可能性低すぎるし…。
後は…罠?

部員の面々を見ても、引っかかりそうな者達ばかりで研磨は再びその箱に視線を移した。


…びっくり箱とか?


1人考え、スクッと立ち上がると再び着替えにかかる。
シャツを脱ぎ、制服のシャツを羽織り、ズボンも履き替えた。
ネクタイに手を掛けた時、ため息を一つついた。


なんで、今日に限って誰も来ないの。


いつもなら誰かしら勢いよく部室へ駆け込んでくるのだが、今日はみんな練習しているのか誰も来る様子はない。


研磨は怪しいものを見る目をしながらネクタイを結ぶと部室を出た。


体育館に行き、近くにいた黒尾に声を掛ける。

「クロ。」と手招きすると黒尾は不思議そうに歩み寄る。


「部室の箱って、誰の?」

「あぁー。名前がお前にって。そうだ、言うの忘れてたな。」


平然と言っている黒尾を見れば不信感は感じられない。
しかし当の本人の名前が体育館にはなかった。


「名前なら今教室に課題忘れたって取りに行ったぞ。」


え、真っ暗な校舎の中…1人で?


灯されているのは職員室のある2階だけだった。
大丈夫かな、と少し心配になりながらも、自分のものとなると開けていいことになるな、と思った研磨は黒尾をジッと見つめた。


「な、なんだ?」


研磨の視線に身を引く黒尾。


クロは何も知らないみたい…だね。


名前と共におれに悪戯でもするつもりなんじゃ、と疑ったのだが違ったらしく黒尾に「ごめん。」とだけ言うと部室へ戻った。

しっかり扉を閉め、箱に手を掛けた。
縦10cm 横10cm 高さ10cmの100立方センチメートルの箱。


パカッと開けば、その中には…


「また箱?」


その瞬間、嫌な予感がした。
とある人形のようなヤツではないのか、と。


箱を持ち上げて振ってみる。
カタカタと音はするもののなかなか真ん中が重たく感じた。


「…。」


黙々と箱を開けていく。
案の定、箱の中に箱、だ。

開けていくうちに、どうやら目的のものが出てきたらしい。
一枚の紙。


「ロッカーの上…」


それだけ書かれた紙を手に持ち立ち上がるとロッカーの上を見た。
そこには…


「…なに、これ。」


カメラ。
録画中だよ、と赤いランプが点滅している。

研磨は眉間にしわを寄せた。


「名前嫌い。」

「えっ?!うそっごめんっけんまっ」


いつからいたのか、それを知っていたのか、研磨はカメラを無数の箱と共に置くとリュックを背負った。
いつからか部室の前で研磨の様子を観察していたらしい名前はあたふたする。


「で、結局何がしたかったの。」

「…研磨の動画が欲しくて。」

「…嫌い。」

「え。」


ガラガラっと部室を出てく研磨。
それをもちろん追う名前は研磨のリュックを掴んだ。


「待って、ごめん。勝手にしたのは謝る…」

「承諾しないよ、おれ。」

「う…そうなんだけど…無断は盗撮だよね。」

「…名前は、おれのこと好きなんだよね。」


振り返る研磨に、縦に首を振る名前。
不敵に笑った研磨が「じゃあ…」と踵を返した。


「おれも名前の動画、欲しいから撮るね。…面白いやつ。」

「絶対ヤバイやつ。それ。」


この後、名前は音駒バレー部全員の元、イタズラされた。

それはそれは、恐ろしいイタズラを…。


「…研磨に好きでいて貰うためには何もしないことだね。」


-END-
back to top