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酸素を取り入れられないくらい
「ねぇ知ってる?」

「ん?」

「酸素を取り入れられない状態が続くと、血液中の酸素量が減って、脳に酸素が回らなくなって働きが止まるらしいよ!」


ふふん。と誇らしく、黒尾を見上げる名前に、彼は「へぇ〜そうなのー?」ととても不敵な笑みを向けて手首を掴み、彼女を引き寄せた。


「え…」

「じゃあ…」


試してみるか。

そう呟いた黒尾の手はすでに顎の下。
その手に力を少し入れる。
顔が上がれば目の前に彼のドアップ。


「…ンンッ」


いつもある僅かな隙間すらなく、口内で舌が絡め取られる。
身体中から熱が上がってくるのがわかる。

心臓が必死に酸素を回そうと拍動を繰り返す。
耳は外の音より自分の心臓の音で何も聞こえない。

ねぇ、これ…高血圧で倒れるんじゃないの?


ぎゅっと黒尾のジャージを握れば、彼は肩に回した手に力を入れてさらに口内を貪る。


もう無理もう無理…っ


名前の眉間に皺が寄り、さらには黒尾の肩をバシバシ叩く。


「っはぁっ…ハァ…ちょっ、殺す気?!」

「誘ったのはそっちだろ?」

「殺せとは言ってない!!」


肩で息を整えながらも、ヘラッと笑う黒尾を睨みながら叫ぶ。

そんな彼女の姿を見て「元気じゃねぇか。あ、それはまだ足りないのかな?」そう言えば彼女の首筋に手を添えた。

嫌だ嫌だと首を振る名前。


「すげぇ好きだよ。名前。」

「っ…」


耳元で、甘くそう囁かれれば、顔をどんどん赤くして黒尾の顔色を伺うように視線を向ける名前。


「…不意打ち…ズルイ。」

「離したくねぇから、キスさせろ。」


何様よ、と言う前に有無言わされぬまま彼から甘いキスが落とされる。


「っ…んんんっ」


やはり苦しくなり黒尾の肩を押し離れる。


「いつも隙間くれるじゃん!!」

「隙間?いや、わざわざつくってねぇわ。」

「はっ?」

「え?」


じゃあ今までのキスは…全部たまたま?!


「名前ちゃーん、君のお鼻はお飾りか何かかな?」

「…いたいいたい…」


鼻をつかまれ黒尾の手首を握る。


あ…。


そこで気づいた名前は黒尾を見上げる。


「鼻で呼吸すればいいんだ!」

「おーい今更だな。」

「じゃあもう大丈夫!」


親指を立てて笑みを見せる名前に、黒尾は「じゃあ…」と再び引き寄せる。


「その酸素とやらが無くなって俺のことしか考えられねぇようにしてやろう。」

「え…いいっいいっ」


不敵に笑う黒尾に、命の危機すら感じた名前は堪らず遠慮する。


まぁまぁまぁ…と身を寄せた黒尾に名前はこの後も苦しいキスを受け続けた。


-END-
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