企画小説はこちら | ナノ
君とのキスの仕方
この前、黒尾先輩に聞かれた。


「お前らってどこでイチャイチャしてんの?」


きょとんとする私に、夜久先輩が「見えないとこでしてるに決まってんだろーが。」と代わりに返事をしてくれた。
ホント、その通りだけど…

いちゃいちゃ…って、何?


研磨の部屋に来ている現在、今日は部活を終え、明日も朝練がある。
寝る前まで研磨はずっとゲームに夢中。


「ねぇ、研磨。」

「なに?」


視線すら向けてくれないこの状況を、誰が見てもイチャイチャしているようには見えないだろうな、と思いながら身を近づける。

最近キスしてないな…なんて考えながら、研磨の身動きの少ないその身に腕を回した。


「…え?なに?」


驚いた、戸惑いの言葉を漏らす研磨に、名前は「最近、キスしてないよね?」と問いかける。
しかし研磨は「だからなに?」とさらに理由を求めてくる。

こういう時の研磨は、そういうことしたくないとき。


…もういいや。
黒尾先輩、残念ですが…私たちはそういうこと(イチャイチャ)しないカップルなんですよ。


ムスっとしてそのまま身を離せば、研磨のベッドにゴロンと寝転がった。
研磨は黙って名前の姿を見つめる。


「…ねぇ、研磨…研磨は、本当に私のこと好きなの?」

「…うん。」


短い返事を聞けば、名前はふっと口角を上げてもぞもぞと掛け布団の中に入った。


「…研磨の匂いだ…。」

「…名前。」


ゲーム機をその場に置いて、彼女に歩み寄る研磨。
しかし、寝てる?と思うほど静かで、動かない。


「名前。」ともう一度、声をかけ、掛け布団に手を伸ばしたとき
勢いよくその手が捕まれ、そのまま引き寄せられる。

唇が重なる寸前で、目を開けた名前。


「…うーん…やっぱり出来ないや…」

「…なんで?」


視線を落とすと、「研磨、したくないでしょ?」と苦笑いをする彼女。
「…名前は、したいんでしょ?」と彼女の顔を覗き込む研磨の視線と重なる。


「じゃあ、いいんじゃない?」


そっと名前の唇に重ねるだけのキスをする研磨。
キスした後は、決まって視線を落とす。

恥ずかしいんだ。


「…恥ずかしいの?」

「…うるさい。」


フイッと視線を逸らせば、そのままどこかへ行こうとする彼。
そのまま名前はベッドに再び身を横にすると顔を両手で隠した。


「うー…研磨、好き。」


ゲーム機を手にした研磨は顔を隠して悶えている彼女の姿を見てふっと小さく笑みを零した。


-END-
back to top