帰宅しようと放課後の階段を降りていた名前。
どこからか真っ赤なジャージを着た黒尾が階段を降りようとしていた。
視線が合うと「おぉ。今から帰んのか?」と笑顔を見せる。
きゅんとした胸を無視して「うん。鉄朗は何してたの?」と問いかける。
彼は「あー…ちっと呼び出し。」と廊下の向こうを指さす。
「監督?」
「いんや。」
否定の言葉だけ言って、彼はそっと彼女に腕を回した。
突然、しかも場所が場所。
校舎内の階段、いくら放課後だからといっても人通りが無い訳では無い。
彼の行動に驚いて「どうしたの?」と問いかける。
「んー…だって言ったら名前妬くだろ?」
「また、告白ですか。」
据わった目を彼に向ければニコニコ笑うだけで何も言いそうにない。
モテる…知ってたけど…わかってるよ!
モテるのもわかる!
でもー…
1人で必死に思考と奮闘していたところ、黒尾が
「俺は名前が好きだからって言ってきた。」
と一瞬で彼女の中の奮闘を終わらせてしまった。
顔を上げれば黒尾がにやっと笑う。
「嬉しいって顔に書いてあるぞ。」
「…。」
いつものように意地悪を言う黒尾。
普段なら何かしら言い返すところを、名前は言い返さず、ぎゅっと黒尾のジャージを握りしめた。
「…。」
その反応に黒尾も黙り込む。
名前はゆっくり、口を開いた。
「…キス、したい。」
そう言われてしまえば、彼は拒むことはしない。
腰に回した腕に力を入れ、彼女を引き寄せる。
「あんま可愛いこと言うなよ。」
冗談っぽくそう言うも、本人には実際そんなに余裕もなく、名前の下顎を掴めばそのまま唇を重ねた。
ぎゅっと握りしめられるジャージ。
視界に入る彼女の紅い顔。
「…なんかエロいな。」
そう呟いた黒尾を睨んだ名前は「鉄朗はいつもだいたいエロい。」と言う。
「ハァ?エロさ醸し出してねぇわ。」
「醸し出してるよ。」
じっと見上げて、名前の手が伸びてくる。
「こことか。」
「っ…バカ!やめろ!」
鳥肌立ったじゃねぇか!と首筋を抑える。
くすくす笑う名前を今度は黒尾が睨めば
名前には勝てねぇな。とため息をついた。
-END-
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