とある日のお昼休みのことだった。
「名前さんいますか?!」
「え…リエーフ。」
「!!な、なんで研磨さんが?!」
2年3組の教室で研磨と昼食をともにしているところに突然1年の後輩、リエーフが現れた。
リエーフの姿を見た研磨はとてもじゃないほどの嫌な顔をし、研磨の姿を見たリエーフは何を思っているのかわからないが少し怒りが含められた口調で言った。
「何もおかしくないじゃない。研磨は友達でしょ?」
「ダメです!俺以外の人と一緒にご飯食べるなんて許しません!」
「…リエーフは、名前の何なの?」
黙って聞いていた研磨が、うるさいと表情から読み取れるほど眉間に皺を寄せてリエーフに物申す。
リエーフはその研磨の言葉に目を丸くした。
「まさか!研磨さんも名前さんのこと好きだったり…?!」
「しないし。リエーフがうるさいから早く黙ってもらいたくて言った。」
「…研磨さんがいつにもまして喋る…。」
名前は苦笑いをする。
研磨はいつになく情を露にしており、相当教室の注目を浴びているこの現状をどうにか回避したいらしい。
「とりあえずリエーフは座ろうか。」
「はい!」
「…。」
早くこの高身長を座らせなければ目立ち続けているも同然だ、と思った名前は隣に座らせた。
研磨はシャットアウトしたようで黙々と弁当に箸を進めていた。
「あ!そうだ!これ、名前さんに!」
「?なにこれ…?」
可愛い袋に入った物を手渡され、首を傾げる名前。
リエーフは「さっき調理室で作ったんです!!」とニコニコしている。
甘い、いい匂いがするそれをそっと開けるとすぐ閉じた。
「え、開けないんすか?」
「開けれない。」
「勿体ないとかですか?大丈夫ですよ!まだまだありますから!」
「いや、ちがくて…」
「?」
様子のおかしい名前を見て、研磨が「見せて。」とその袋を奪うと中を見る。
表情が一瞬にして変化したのを名前は見逃さなかった。
「引かないでっ研磨!」
「え?!引く?!そんな悪いものじゃないっすよ!?」
「無理…」
再びシャットアウトした研磨の表情はそれから変わることはなかった。
リエーフは名前に「食べてくださいよっ」とお願いするが、名前は袋を開こうとしない。
「家帰ってから大事に食べるから…今は、見逃して。」
「無理っす!何が不満なんですか?俺が作ったものは食べられなってことっすか?」
「ちが…!そうじゃなくて!その…」
「え?なんすか?」
名前が小さく言葉を発したものの、リエーフ本人には届かなかったようで彼は耳を寄せる。
名前は観念したように、ハッキリ伝えた。
「ハートなんて恥ずかしい…よ。」
「え。そんなことですか?」
「…そんなことじゃないから!」
カップケーキの上にピンクのチョコレートペンでハートと名前を書かれていたそれ。
名前は、彼の見え見えな愛の表現の仕方にもう何も言えなかった。
-END-
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