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それ、着てていいからね
音駒高校バレー部に、長身のMBが入った。
うちの脳である研磨が苦労した存在、1年のハーフ。


灰羽リエーフ。


年下だというのに背が高いし、よくタメ口を使用する。
そのせいか…後輩だということをよく忘れる。


「名前さん!明日からテスト期間に入るじゃないですか!」


ボールを両手で持っているが小さく見えてしまうそれに視線を向けながら「うん。そうだね。」と返すと視線を挙げた。

リエーフはニコニコした表情で楽し気に話す。
何がそんなに、いい話なのだろうか、とさえ思ってしまうほどに。


「勉強教えてくださいよ。」

「…リエーフに勉強教えてたら、名前の点数が落ちる。」


研磨がリエーフの背後を通る際にそう言い放つ。
グルッと振り返ったリエーフは「そんなことないですよ!」と研磨に食って掛かる。

研磨はトボトボと準備室へ歩いて行った。


「あはは。」

「…落ちますか?」


首を傾げて問いかけてくるリエーフに口角を挙げた名前に、目を少し開いたリエーフ。


「落ちるかもね。」

「えぇっ」


笑っている名前の目の前に立つ長身のハーフの背後から現れた主将。


「リエーフ!」

「!!」

「うちのマネージャーに手出すなんぞ百年はえーんだよ。」

「ひゃく?!…黒尾さんは手出してもいいんすか?」


リエーフと黒尾のいつもの会話がはじまる。
名前は苦笑いしながら二人の会話を黙って聞く。


「そりゃお前、主将が出さないで誰が出す。」

「なんの話だよ。」


夜久が鋭いツッコミをするも、リエーフはそんなこと聞いていない。


「名前さん、教えてくれますよね?」

「うん。いいよ。」


「やったー!」と手にしていたボールを放り投げたリエーフ。
それをキャッチした名前は苦笑いした。





「じゃ、よろしくお願いしゃっす!」

「リエーフって何が苦手なの?」

「わかんないっす。」

「え?」


翌日の放課後、部室を借りて勉強する二人。


「名前さんって苦手な科目あるんスか?」

「え…あー…化学。」

「化学って2年であるんです?」

「うん。あるよ。」

「えー…いやだな。」


静かに、黙々とこなしていくリエーフと名前。
うとうとし始めた名前は、必死に目を覚まそうとシャーペンを動かすものの…


「名前さん、ここなんすけど…あれ。」


リエーフが振り返ると、そこには夢の中の名前。
リエーフがジッと顔を近づけて「名前さん?」と問いかけてみるも返事はない。


「…チューしますよ?」

「…。」

「…無防備な名前さんが悪い。」


そっと、彼女の頬にキスを一つ落としたリエーフ。


「くっそーかわいい。」


そんなことを言いながら、ぐっと我慢するリエーフ。


「…名前。好き。」


言っても、返事は帰ってこない。


「まぁ、わかってますけどね!」


ぐっと立ち上がり、彼女の肩に自分のブレザーをかけるリエーフ。

外が暗くなり、そろそろ、とリエーフが立ち上がった時。
パチッと目を開けた名前。


「あれ?!寝てた?!」

「はい。ぐっすり。」

「なんで起こさないの!!」

「だって、かわいかったんで。」

「へ…」


ニッと笑うリエーフに「帰りましょう。」と言われ立ち上がるとバサッとブレザーが肩から落ちた。

名前が「リエーフの?」と問いかける。


「あぁ。そうです。それ、着てていいっすよ。」


いつもにも増して、男らしく見えるリエーフの表情に、ドキッとした。


「俺、名前さんが着てる姿見たいんで。」

「…。」


のは、嘘。

最後にリエーフは、いつも残念だ。


-END-
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