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うん、そんなのいやだよ
「お、バレー部来た。はよー!」

「はよー。」


朝の登校時間、ぞろぞろと生徒が登校して来る中、朝練を終えたバレー部が教室に入ってきた。

黒尾がクラスメイトに返事をしたその背後から夜久が入ってくる。


「夜久もはよー」

「おー…」

「?」


様子のおかしい夜久にクラスメイトは「どうした?」と問いかける。


「いや…あ、いた。」

「?」


教室を見渡していた夜久の視線が止まったその先には、一人の女子生徒が教室に入って来たところだった。


「苗字。お前俺のノート持って帰っただろ。」


そう言って、その女子生徒へ歩み寄っていった夜久を目で追いながらクラスメイトは「なんだー彼女探してたのかよ。」と呆れた。


「え?うそ…」

「嘘じゃねぇ。きょう当たるかも…ん?」

「え、なに…」


夜久が名前の腕を掴む。


「どうした、この傷。」

「あっいや…ちょいと挟みまして…」


手の甲の傷を見た夜久。
すぐにその手を引っ込めた名前は苦笑いで挟んだと言う。


「挟んでなる傷か?それ。」

「…夜久に傷つけられたんじゃん。きのう。」

「嘘つくな。」


そんな二人の背で咳払いが聞こえた。
振り返れば、そこに担任の先生が待ち構えていた。


「げ…」

「早く席につきなさい。」

「「はい。」」


夜久は名前の腕の傷を気にしながら何かを考えていた。


「うーん…変だ。」

「あ?何が?」


黒尾と昼食を食べていた夜久が彼女の動きを見て、様子がおかしいと判断した。
黒尾は何のことかさっぱりわからず口を動かす。


「苗字。アイツ、きょう俺のところに全く来てない。」

「いつも何かしら用事作って来るのにな。」


「どれも無茶苦茶な用事だけど」と黒尾が付け足す。
そんなに休み時間になるたび一体どこに行く用事があるっていうんだ、と疑問に思った夜久は昼食を食べ終えると黒尾と共に彼女を探しに行く。


「あ。苗字。」


黒尾の視線の先にいた彼女は、どこか元気がないように見える。
視線が合うと笑顔を見せた彼女は、いつもと変わりないように見えたが、腕の傷が酷くなっていた。


「黒尾。」

「ん?」


部活に行く前、黒尾に「苗字見送ってから部活行く。」と告げ、教室を出ていく彼女の後をつけた。

俺の勘が当たってるかもしれねぇけど…当たられると困る。


彼女が階段を下りたそこでは、数人の女子が待ち構えていた。


…やっぱり。


夜久の予感は的中した。


『で、行くの?行かないの?』

「…行きます。」


?何の話だ?


名前の言葉を聞いた彼女たちは満足な顔をして彼女には何もせずそのまま帰っていった。

ジッと突っ立っている彼女の背に声をかけた夜久。
振り返った彼女の目には涙が溜まっていた。


「…夜久…。」

「…そんなんになるまで俺に言わないって何なわけ。」


そっと歩み寄ると、彼女を抱き寄せる。
ぎゅっと背に腕を回し、制服のシャツを握る名前が「ごめん。」と謝った。


「夜久と付き合ってること、バレた。」

「はぁ?それが何だよ。別にバレて困ることなんてねぇだろ?」


その言葉に首を横に振る彼女。


「夜久のこと、好きな子がいる。」

「…さっきの奴らか。」

「…合コン開いてあげるから、別れろって。」

「ハァ?なんだそれ。あ、それで行くって言ったのか。お前。」


やっと話の辻褄が合った。
夜久は「行くなよ。っつか行かなくていい。」と言う。

彼女は顔を上げた。


「代わりに俺が行こうか?」

「そんなの嫌だ。ダメ。」

「だろ?名前と同じだ。俺も行ってほしくない。」

「名前…」


「何?」と問いかけるなり、見上げてる彼女の唇を奪う。


「…大好き。」

「上出来。」


-END-

(やっくんかっけぇ。)
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