観察力
練習が始まり、音駒は梟谷と練習試合を繰り広げている。
名前は、梟谷のエースをじっと見つめていた。
『赤葦!いートス上げろよ!』
高く飛ぶと、その前には研磨とリエーフ。
ニッと笑うなり、腕を振り下ろす木兎。
ボールは研磨とリエーフの間を通り抜け床へ叩きつけられた。
ピッと得点のホイッスルが鳴る。
その瞬間隣に座っていた猫又監督が立ち上がり『研磨!よけるな!』と叫ぶ。
研磨を見ると怪訝そうな顔をして「腕もげる…」と言う。
猫又監督は『もげない!!』と言い返す。
そんなふたりを見てクスッと笑う名前。
ふと、視線を感じた先を見ると梟谷のエースとバチッと目が合った。
ニッと笑われる。
その笑顔に、無邪気だなぁ…と思う名前の心は、年上だというのに幼い子を見ているような目線で木兎を見ていた。
タイムアウトの時、黒尾が『木兎が調子上げてきやがるな…』と話す。
『調子上げきる前に抑えときたいっすね…』と山本。
ボトルを手渡す名前に研磨が「ねぇ、」と小さな声で話しかけた。
「相手のエース、名前見てるよね?仲いいの?」
「…研磨の観察力凄い…。」
さすが、研磨。と尊敬の眼差しを研磨に向ける名前とは逆に、彼はジトーッとした目で彼女を見つめる。
「私もよくわからないんだけど…目が追っちゃうんだよね。」
「え。名前が見てるの?」
予想外のことに研磨は戸惑う声色を見せた。
「いや…うん、まぁ…はい。」
「なに…それ。」
視線を落としたり上げたりする名前を見て呆れる研磨。
「…あーゆー人、好きなの?」
「見てて飽きないよね。なんか…可愛い。子どもみたいで。」
とくすくす笑う名前にボトルを突き出す研磨。
名前は目をぱちぱちさせ、研磨の横顔を見た。
「名前を囮に使えば勝てるかも…」
「えっ?!」
「なんて…」
「冗談だけど。」と、髪を揺らした研磨の表情は、柔らかいものだった。
ホッとした名前は、後々考えてみると…
あ、遊ばれた…。
機嫌損ねたのかと思った名前を見て、読んだ研磨の荒手技だった。
名前はまんまと引っかかりガクッと項垂れた。
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