赤いリボンの猫[完結] | ナノ

台無し


『ねぇねぇ、音駒のマネージャーなんでしょ?』

「はい、そうですけど…」



アップを始めたみんなを横に、森然高校の選手が声をかけてきた。

バレーの人って、背高いんだなぁ…。

と見上げていると、その人はにこやかで優しかった。



『いいよねぇー音駒強いし、イケメン多いもんね。』

「お、男の人から見てもそう思いますか?」



目をキラキラさせる名前に、うんと頷く選手。



『でも、まさかマネージャーがこんなに可愛い子だなんて思ってなかったから…ズルイなぁ、音駒。』

「え…」



一瞬、雰囲気変わった気がした。



『はい、ストーップ。マネージャー困ってるから。それに、早くコート戻った方がいいぜ。』



名前を覆い隠すように、前に立ちはだかる黒尾。

どんな顔をしているのか名前にはわからないが、おそらく怖い顔をしているんだろうと想像はついた。



『後で覚えてろよ?うちのマネージャー困らせたら…タダじゃすまねぇぞ。』

『!!』



パタパタと足音が遠のいていくのがわかり、黒尾の背から顔を覗かせる名前に、トボトボとやってきた研磨が「大丈夫だった?」と声をかけた。



「うん…助かりました。」

『ほんっとに、モテんのな。』



黒尾が振り返り、嫌味ったらしく名前に言う。
研磨はそんな黒尾を見て「クロだってとっかえ引っかえしてるじゃん。」と言う。


それを聞いた名前は黒尾に嫌な顔を向けた。



『やめろ、俺を攻撃するな。』



アイツを攻撃しろ、と先ほどの選手を指さす黒尾に名前は「ちょっと見直すとすぐ台無しになりますね、黒尾先輩。」といってニコッと笑った。



パタパタとベンチに戻っていく名前の背を見ながら黒尾が研磨に問いかけた。



『…本当にあの子が甘えんのか?』

「その話、いい加減に忘れてよ。」



腑に落ちない、とでも言っているかのようにコートに戻る黒尾。

研磨はベンチに戻った名前の姿を見ていた。



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