赤いリボンの猫[完結] | ナノ

大好き


ハッキリとした声で、聞いた研磨の顔は相変わらず逸らされているが…横から見る視線はどこか不安そうにしているように見えた。

名前は、その横顔を見つめたまま「うん…。」と呟くように言うと研磨の袖を握った。



「…触れたいんだけど…拒まれたら、嫌だなと思って、触れれなくて…。」

「…え?」



やっと、視線が合った。

ふわっと笑う名前を見た研磨は、ドキッとして視線を落とす。



「練習してる時の研磨見てたら…本当にあの人、私のこと好きなのかな。って不安になる。」

「…。」

「あんまり喋れないし…。でも、研磨は何も考えてないみたいにバレーに夢中だし。」

「…ボールにやきもちやいてるの?」



眉間に皺を寄せて名前を見る研磨に、ぶっきらぼうに「うん。」と言う名前。



「せめて人にしなよ。」

「…研磨が喋ってくれないから…。」



そう言って掴んだままの袖を引っ張る名前に、「引っ張ったら伸びる…」と言った研磨に身を寄せた名前はそのままそっと頬にキスをした。

え…と、目を見開く研磨の視界には目を薄っすら開ける名前。



「…怒らないね。」

「怒らないよ。嫌じゃ、ないし。」



視線を落とす研磨の首に腕を回す名前。
研磨はジッとしてどうしたらいいのかわからずとりあえず彼女の背に片腕を回して身を支える。



「…好き。」

「…名前、危ないから…」



下に階段が伸びているのを見て研磨は必死に彼女に訴えかけるが、名前はそれとは逆にぎゅっと研磨に抱き着く。



「大好き。」



諦めた研磨は、名前の体を支えながら「…俺も。」と返事をする。

それを聞いた名前は研磨と少し距離を取ると「っ…あのっ…」と顔を赤くして研磨を見る。



「?」



首を傾げる研磨に、名前は口を小さく開いた。



「キス、したい。」

「…さっきしたじゃん。」



恥ずかしいのか視線をフイッと横へ思いっきり逸らした研磨。



「あれはキスじゃないよ。…キスだけど…。」

「…なに、それ。」



小さく笑う研磨に、きゅんとした名前はジッと研磨を見る。
少し身を起こした研磨。

どちらからともなく、唇を重ねた。


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