赤いリボンの猫[完結] | ナノ

やきもちから…


「名前。」

「ん?」



片付けをしているとカウンターに姿を現したのは、なんと研磨だった。
名前は、嬉しさのあまり顔の緩みが抑えられないまま「どうしたの?」と問いかける。

その表情から視線を落とした研磨が「ううん、やっぱ、後でいい。」と食堂を出ていく。

そんな研磨を見ていた生川高校のマネージャーが『いいよ。あとは食器片すだけだから、4人もいれば十分だよ。』と優しい言葉をかけてくれたため、名前は「じゃあ、すみません。お願いします。」と頭を下げ、食堂を慌てて出る。



「研磨っ」



階段を上がりきった研磨の姿を捕らえ、声をかける。
ピタリと歩みを止めた研磨が振り返る。



「いいの?抜けて…」

「うん。ちゃんと謝って来たよ。どうかした?」



優しく声をかける名前に研磨が「うん…」と視線を落とす。
素直な研磨に顔を覗き込もうとした名前の腕を優しく掴む研磨。

あまり、研磨から触れられることがないため、ドキドキする名前はその手を見て「…研磨?」と名前を呼ぶ。



「…名前。」



何かいいかけた研磨の口が閉じられる。
下の階から誰かが上がってくる様子だ。


「上、いこ。」そう言って名前の手を離し、階段を上がっていく研磨の背をついていった。



「ここまで来たら、誰も来ないね。」



最上階、屋上の前まで来た二人はその階段に腰を下ろした。

名前は隣の研磨の顔を覗き込むなり、「なんか、あった?」と優しく問いかけた。


研磨は名前とは反対に視線を向け、小さな声で言う。



「…クロ。」

「黒尾先輩が、どうかした?」

「…ばっかり。」

「…もしかして…見てた?」



「カウンターで、話してたの。」と問いかける名前。
視線を前に向けて、すっと落とす研磨の横顔を見つめる。



「ふふ…やきもち?」

「…。」



黙ったまま、眉間に皺を寄せる研磨。
「可愛い、研磨。」と久しぶりに口にした名前はニコニコしている。



研磨は名前の顔を見るなり、「ねぇ…」と呼ぶ。



「ん?」



首を傾げる名前に研磨が問いかける。



「俺のこと、好き?」


[ 89 / 110 ]
prev | list | next

しおりを挟む