赤いリボンの猫[完結] | ナノ

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森然高校、体育館。

くわっと欠伸をする名前。
それにつられたかのように研磨もくわっと欠伸をする。



『おい、研磨ぁ!声出せやコラッ』

「!!」



山本の声に欠伸が二人とも止まった。
名前は手にしていたバインダーで口元を隠す。

研磨はだるそうに山本を見る。



「虎、うるさい…」

『当たり前だろーが!!練習試合でも試合は試合だろうが!!』

「…手、抜いてないし。」



練習試合、相手は埼玉の森然高校。
慣れているのか、相手校の選手もふたりを見てまたやってやがる、という顔をしている。

そこへ主将登場。



『はーいはい。次サーブだから…さっさと行ってこい。』



山本は黒尾の顔に脅されるようにコートの外へ。
そして研磨を見る黒尾。


研磨はふいっと視線を逸らすなり、ベンチの傍に立つ名前と目が合う。



目を少し見開いた研磨だが、すぐ試合へ気を戻した。

その様子に首を傾げた名前。



「はい。」

「うん…」

「?どうかした?」



森然高校がタイムを取った時、タオルを手渡した名前。
そのタオルをじっと見つめる研磨に問いかける。

タオルを広げて首にかけると「なんか…」と口をゆっくり開いた。



「名前がいること、忘れてた。」

「…。」

『それは、ひどいな。』



黒尾が隣で聞いていたらしく、苦笑いで突っ込む。
名前はしゅんとしてトボトボと他のメンバーにタオルを配りに行った。

その姿を見て黒尾が研磨に『名前が合宿に参加すんの、はじめてだもんな。』と言う。



「…フォロー、しておいて。」

『いや、それはダメだろ。お前がちゃんとフォローしてこい。』

「…。」



そうこう話しているうちに時間切れ。
メンバーはコートに戻っていく。

名前は研磨をこっそり見る。



…かっこいい。



研磨のボールを追っている姿に惚れ惚れして、さっきの言葉なんてすっかり忘れた名前。

ポーっと見つめるその姿を見た芝山が声をかける。


『名前さん、点数入ってます。』

「!!は、ごめん!」

『い、いえ…』


即座にバインダーに点数を記録する名前。


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