変わるとき

『名前ー。ボール出し頼む。』

「あぁ、はい！」



手にしていたノートを床に無造作に置き、籠からボールを持つ名前。



「いいよ。」

「はい。」



研磨の合図と同時に名前がボールを山成に投げる。
それとほぼ同時に走り出す黒尾。


綺麗に上がったトスを黒尾が素早く打ち落とした。



『お願いします！』

「はい。」



山本が高く踏み込むなりそれに合ったトスと研磨が送り出す。

近くで見ればみるほど、個性がわかる。

それを、ちゃんとコントロールしてる研磨。



「リエーフ。こっち。」

『えっすんません！お願いします！』



研磨が指さしたそこへ身を置くリエーフ。

研磨が位置を変えた。
名前はそのままの位置からボールを山成に投げる。

距離が遠くなったため、軸が大きくズレてしまった。



「ごめっ…」



謝るより先に研磨がボールを追う。

綺麗にリエーフのアタックは決まった。



ポーっと立っている名前に黒尾が『名前ちゃーん？ボール出して。』と声をかける。


見とれてる場合ではない、と名前は「はい！」と余計な事を吹き飛ばすように声を出しボールを手に取った。





片付けを終えた部員たちがゾロゾロと部室へ戻る中、体育館の端で名前と夜久が何やら話し込んでいる。


名前は険しい顔をしたり、思いついた顔をしたりとコロコロ表情を変え最後には声を出して笑う。



その姿を見て、すぐ視線を逸らして部室へ戻っていく研磨に、黒尾が『おいおい、彼女が他の奴と楽しそうに喋ってるの、放ってていいのか？』と言う。

研磨は「いいんじゃない。」と平然と答える。



『お前さ、最近名前避けてるだろ。』

「避けてないし…」

『嘘つくな。』

「ついてない。」

『…素直じゃねぇな。』



はぁ…とため息をつくなり、にやりと不敵に笑う黒尾。

研磨はゾッとして顔を引き攣らせた。



「…何。気持ち悪い。」

『…悩んでんだろ。』

「っ…。」


鋭い黒尾から視線をフイッと逸らした研磨。


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