赤いリボンの猫[完結] | ナノ

マネージャーの成長


『名前さん、俺のもお願いします。』



犬岡が名前にボトルを手渡す。
暑いため、みんな飲む量が増えて名前も忙しくなっていた。


犬岡からボトルを受け取るなり、ドリンクを入れに行こうとした時、黒尾に呼び止められた。



『ちょっと待て、名前。』

「はい?」



体育館を出ようとしていた名前が振り返ると、駆け寄って来た黒尾。



『悪ぃんだけどアイシングも持ってきてくれないか?』

「え、誰が使うんですか?」

『あー、俺だよ。』



そう言ってへらっと笑う黒尾に、目を見開いた。



『さっきリエーフと衝突しちまって…肩痛くてさ…』

「…え…見せてください。」



黒尾のシャツの袖を捲り上げて見る名前に黒尾はふっと笑う。



『心配しすぎだろ…たかが衝突。』

「黒尾先輩は主将でしょ?主将のいないコートなんて見たくない。」



今度は黒尾が目を見開いた。



『おいおい…んな、マジになるなよ…敬語じゃなくなってんぞ。』

「うるさい。戻ってください。すぐアイシング持っていきます。」



黒尾を睨むなり、パタパタと駆けて行った名前。

その背を見送るなり、大人しく言われた通り体育館へ戻ろうとしたところに研磨が立っていた。
どうやら先ほどの会話を聞かれていたようだ。

無表情から、バカにするような顔を黒尾に向ける研磨。



「クロ、うるさいって…。」

『うん。言われたな。今。…見たか?アイツ。』



『いつの間にあんなにマネージャーらしくなったんだか…』と呆れたような口調で研磨に言う。

研磨は少し考えた後、「うん…。」と視線を落とす。



「知らない間に、知られてて怖いんだけど…。」

『お前のことしか見てねぇんだと思ってたわ、俺…』

「名前は、みんなのこと、ちゃんと見てるよ。」



「この前指痛めてたのなんかバレてたし…」と指を見る研磨に、黒尾は笑った。



『隠し上手な研磨くんもさすがに名前には見破られんのか。こえーな。』

「だから怖いって言ったじゃん…。」

「何が怖いんですか?」



二人の背後から名前がアイシングとボトルを持ち首を傾げる。


研磨と黒尾は顔を見合わせてから、黒尾は振り返り苦笑いを、研磨はそのままどこかへ向かっていった。


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