赤いリボンの猫[完結] | ナノ

マネージャーと副主将


7月。
夏休みに入った音駒バレー部は、埼玉の森然高校で行われる長期合宿を明後日に控えていた。


蒸し暑い体育館は、まさに地獄。

名前は髪をポニーテールにして、汗を拭いながら頑張っていた。



『オーライ!研磨!』



黒尾の声が体育館に響く。
つられて視線を向けた名前の目には、トスを上げる研磨の姿が映った。


ドキンと、高鳴る胸。


好きな人とは、不思議なもので、日に日に目に映る姿がかっこよくなっていく。


最近は、よく動く研磨の姿を見てはギュッと締め付けられるような感覚がして、たまらなくなる時がよくある。


部活ばかりで、なかなか2人きりになることがなく、それでいて恋人らしいこともない。


付き合ったのは、夢だったんじゃないかと言いたいくらい…何も変化はない。



『何で行くんすかね?』

「電車でしょ。」

『え、マジですか。』

「…わからない。クロに聞いて。」

『ちょっと、研磨さんも行くんすからー』



リエーフと恐らく明後日の合宿の話をしている様子の研磨。

名前は副主将の海に引き止められた。



『マネージャー。』

『はい?』



ふわっと微笑む名前に同じくふわっと微笑む海。



『ドリンクください。』

「え、なくなりましたか?」

『うん…俺だけみたいだけどね。』



そう言って他の部員へ視線を向けた海は、苦笑いする。



「みんな、さっき入れたんで…海先輩のだけ確認しなかったみたいですね…すみません。」

『いや、うん…。』

「すぐ入れます!」



海の手からボトルを奪うなりドリンクを入れに行った名前の姿を見送った海。



『なんかさ、海と苗字ってこう…似てるよな…』

『そうか?』



夜久が二人の様子を見ていたらしい。
『うん。』と頷く夜久。



『雰囲気が。』

『俺あそこまで明るいかな…』

『明るい明るい。』

『テキトーに言うな。』



ボトルにドリンクを入れて持ってきた名前が、海に笑顔で手渡す。

海も笑顔でそれを受け取る。



夜久は『やっぱり、似てるわ。』とひと言呟いた。



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