恋人
中間テストのいざこざが解決して、インターハイ予選に向けて練習が再開され、少し経った時…
「名前。」
「研磨?」
タオルを頭に被り、とぼとぼと歩み寄って来た研磨。
みんなとは離れたところで、予選の相手校について調べていた名前はペンを片手に研磨を見上げた。
膝の上に置かれたノートをスッと手に取る研磨。
「強そう?」
「音駒高校に勝る相手はいないよ。」
ハッキリ答えた名前に研磨は「大袈裟だね。」と言ってしゃがみ込む。
「大袈裟じゃないよ。」
同じ目線になった研磨に少し怒ったような顔を向ける名前。
「…怒った?」
「怒ってないよ…」
ふいっと視線を研磨から逸らした名前を見て、研磨は柔らかく口角を上げた。
「名前、そのまま聞いて。」
「…?」
そのままと、言われたのに、名前は視線を研磨へ向けて首をかしげる。
研磨は、タオルの両端を掴んで
「付き合う?」
「……へ。」
言いにくそうに、でもたしかに研磨の口から出された言葉だった。
名前は、固まった。
付き合う?
それって…恋人になるってこと…。
名前は研磨の言葉を理解すると、頬を紅く染めた。
その顔をノートで隠す。
『研磨ー!はじめるぞー』
「うん。」
黒尾の呼びかけに立ち上がった研磨。
その時、咄嗟に名前は研磨の腕を掴んだ。
「…なに?」
「…つ…」
「?」
首を傾げて、名前に向き直る研磨。
「付き、合う…」
恥ずかしくて、俯き、語尾のほうはあまり聞こえなかった。
でも、研磨は「うん。」と返事をしてみんなの元へ向かった。
名前はノートをギュッと抱きしめた。
『研磨、俺とリエーフと山本にトス上げてくれ。交代でアタック練習する。』
「わかった。…リエーフ。」
『はい!なんすか!』
リエーフに説明する研磨の様子を見て、黒尾が口角を上げた。
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