赤いリボンの猫[完結] | ナノ

部室での会話D


『そいや、研磨、部活始まる前にどこ行ったんだ?』

「…教室。」

『忘れ物か?』



部活終了後、部室で山本が隣で着替えている研磨に思い出したように問いかけた。

「まぁ、そんなところ。」という返事に、山本はジッと置かれているノートを見つめる。



『告白だと思ったのか?』



ネクタイを結びながら黒尾がニタニタと山本を見る。



『いやぁ、ちょっと思いますよね。放課後っていうシチュエーションって…』

「…あ。」



山本の言葉を聞いた研磨は内心驚いた。
虎にしては鋭いな、と。

そしてそれをバラすかのように手がノートに当たり、落ちる。


山本はそのとき、手紙が姿を現したことに気づき、それを手に取る。
研磨はノートを拾い上げると再び同じ位置に置いた。


山本は、研磨を背にガサゴソをその手紙を開いた。



『…うそだろ。』

『?何すかそれ。』



手紙を持つ手を震わせ、ゆっくり振り返る山本。
リエーフは山本の手元を覗き見る。



『おい、研磨。』

「なに?」

『どした?』



研磨は、山本の手元を見た。
黒尾も研磨の上からそれを覗き見る。

他の部員も、山本に視線を移した。



「見てるし…。」



見られてしまったものは仕方がないと、研磨は無理に山本の手からその手紙を取ろうとはしなかった。

山本はゆっくり、現実を受け入れようと思考を回している。


黒尾は研磨に『なんだ?それ。』と問いかけた。



「手紙。」

『いや、見りゃわかるよ。…誰から?』

「ノート貸した人。」

『ってことは、御礼の手紙か何かか?』



研磨はノートとその手紙を先に鞄へ仕舞う。
黒尾の言葉に研磨は黙る。

山本は思考が止まっている。


察した黒尾は『研磨の良さに気付く奴が名前の他にもいたとはな。』と言う。
それを聞いた夜久が『研磨と仲良くなると恋に落ちちゃうんじゃねぇのー?』とニヤニヤしながら言う。



『でもこの髪っすよ!?』

『いや、お前よりマシだろ。』



やっと帰って来た山本の一言に黒尾が即返事をする。

始まる前と同じく、落ち込む山本をリエーフと犬岡が宥める。



『それ、どうすんだ?』



手紙に視線を向けながら、黒尾が研磨に問いかける。

研磨は「断った。」と言う。



それに、黒尾は『え…もう?』と少し焦る。



「うん。」



平然と黒尾に答え、ゲームの電源を入れる研磨の様子を見て“ぬかりねぇ”と口角を上げた黒尾だった。


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