赤いリボンの猫[完結] | ナノ

遠い


「氷買い足しに行くの。」

『へぇーマネージャーしっかりやってんのな。』



楽しそうに話す二人。

研磨は、望月を見て考えていた。



望月は、おそらく誰から見ても黒尾の言うイケメンだ。

でも、自分はどうなのだろうか…


イケメンではない。


名前は、一体じぶんのどこが好きなんだろう?


やはり、結局そこへたどり着いてしまう。



「ごめん、研磨。…研磨?」

「うん。行こ。」



ボーッとしていたら、話をいつの間にか終えて名前が申し訳なさそうな顔をして立っていた。


注目を浴びるそこには居づらく、そそくさと門を出た。



「この前、聞いたこと聞いてもいい?」

「うん?」

「俺の、どこがいいの?」



その研磨の言葉に、名前は頬を染めて笑った。



「へへへ…」

「?」



「あの時答えれなかったのは、イマイチ、どう言えば伝わるかな…と思って。でも、今なら言えるよ。」



そう言ってニッと笑う名前。



「全部!」

「…え?」



研磨は、驚いた顔…ではなく、眉を八の字にして困ったと言ったほうが合うような顔を向けた。



名前は何か吹っ切れたように、隣に本人がいるにもかかわらずペラペラと饒舌に話す。



「ゲームが好きな研磨も、アップルパイが好きな研磨も、バレーしてる研磨も、セッターしてる研磨も…黒尾先輩と話してる研磨も…私と話してくれる研磨も…全部。」



研磨は何も言えず、ただ視線を落として「ばか、なんじゃない?」と言う。



名前は笑って「そういう研磨も好き。」と言う。



研磨は何も言えず黙り込んだ。

そんな研磨に名前が小さな声で



「遠いなんて、言わないでよ…せっかく、近くなれたと思ってたのに…離れて行かないでよ。」



名前の言葉に、研磨は顔を歪めた。



「私だって、思うよ。なんで研磨は私のこと好きなのって…どこがいいのって…」



名前は快晴の空を見上げた。



「私から見るバレー部のみんなは、他の部活をする男子、誰よりもかっこいいし、黒尾先輩が自慢するうちのセッターは、とてもじゃないけど、私にはもったいないくらい、かっこいい。」



空を見上げて両手を伸ばす名前に視線を向けた研磨。



「…手を伸ばしても、届かないのは、研磨だよ。」



そう言って、研磨を見た名前の顔はどこか切ない顔をしていた。



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