二年四組
「研磨、二年の苗字って奴、知ってるか?」
「知らない……」
「やっぱり知らねぇか……たぶんお前の隣のクラスなんだよなー」
「……へぇ……よく知ってるね、クロ」
そもそも、どうして二年の生徒、しかもピンポイントで彼女ただ一人の名前を出したのだろうか、と疑問を感じながら二年四組の教室を覗いている黒尾の姿を見る。
「……いねぇなぁ……」
黒尾の隣に行き、少し顔を出し、教室内を覗く研磨。一緒に体育の授業を受けているため、顔ぶれは大方覚えてはいる。しかし、名前まではハッキリしない。
男子なら、少しはわかるけど……女子は、わからない。
諦め、ドアを塞いでいることに気付き一歩下がった研磨。その瞬間を狙っていたかのように、人が入っていく。フワっといい匂いがした。フルーツの香りだ。
通り過ぎていった女子生徒を見る研磨の目は、肩より少し長めの黒髪を靡かせて、教室を見渡しながら入っていく姿を追う。
横顔美人…。
彼女の姿を見つけた女子生徒が「名前!」と名前を呼ぶ。
名前……っていうんだ。
「どこにいんだろ……そもそも情報が少なすぎるっていうのが問題か。顔を間近で見たわけじゃねぇしな……」
黒尾が諦めたようにドアから距離を取った。
「その人、バレーしてた人?」
そう問いかけると、黒尾は「いや、わからねぇんだけど……」といきさつを話し始めた。
「たまたまグラウンドで、お前が体育の授業してたんだよ。それを上から見てたわけ」
「えー……言ってよ」
研磨がなんとも言えない顔をしながらそう言う。「アホか、言ったら面白くねぇだろ」と返す。
「黙って観察してるなんて……性格悪い」
「お前な……」
呆れた顔をする黒尾に「それで?」と話の続きを催促れば、黒尾はふっと小さく笑った。
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