赤いリボンの猫[完結] | ナノ

お似合い


3組の教室に入ると、そこには小池の姿はなく机の上にノートだけが置かれていた。


そのノートを手にする研磨。

ノートから何かが音を立てて落ちた。


手紙…?


床に落ちた封筒を見て名前は書かれておらず、とりあえず小池からの御礼文だろうと思った研磨は中を開く。


そこには、可愛らしい女の子の字が並んでいた。






更衣室で着替えを終えた名前は髪を結びながら体育館へ向かう。

ちょうど入口付近にいた主将の姿をみて「黒尾先輩。」と声をかけると『お、来たな。何してたんだ?』と問いかけられ「ちょっと…」と言葉を濁した後、研磨に氷買い足しの件について聞いたことを伝える。



『研磨に会ったのか…じゃあなんで一緒に行かなかったんだ?』

「え…あ…」



抱きしめられて、氷買い足しの付き添いを頼むことなどすっかり脳に無かった名前は、あははは、と下手な芝居をする。


その様子を深くは探らず、『なんでもいーけど。早く氷買ってきてくれますー?』とニヤニヤしながら言われた名前は、察した。


黒尾は研磨と行ってこい、と言っているということを…



「…夜久先輩、一緒に…」

『え?』

『夜久はダメだ。』



黒尾のすぐそばにいた夜久に声をかけた名前だったが、黒尾に即却下されてしまった。


見下す黒尾を、下から睨む名前はふいっと視線を逸らした。



『…研磨と、ちゃんと話した方がいいだろう?』

「…う…。」



確かに…と思った名前の心を盗み見たかのように黒尾は『じゃあ2人で行って来なさい。』と肩を二度叩き、背中を押した。



体育館を追い出されてしまった名前は、トボトボと研磨を探しに再び来た道を戻る。


教室に、まだいるかな?


階段を上がろうとしたところで、パタパタと階段を降りてきた研磨と出くわし、「あ、研磨…」と声をかけたものの先ほどのことを思い出し視線を落とす。



研磨は、名前の姿に少し気まずいものの、「どこいくの?」と問いかける。



その問いかけに名前は頬を染めた顔を上げて「研磨と、一緒に行きたくて…氷買い足し。」と言うと、それを聞いた研磨は視線を彼女から逸らし、この機会に話そうと思った。



「わかった。」



研磨はノートを下駄箱の上に置き、靴に履き替えると名前と玄関へ向かった。



走り終えたサッカー部があちらこちらに座り込み、荒くなった息を整えている姿が見える。



『苗字ー。』



サッカー部員の中から立ち上がる一人。
なぜかサッカー部に混じっていたバスケ部の望月に声をかけられた名前。

望月の姿を見て、ぱっと表情を和らげた名前を見てモヤモヤする研磨は、二人の姿を見ていた。



『どこ行くんだ?孤爪連れて。』



望月と名前の話す姿を周りのサッカー部員達が興味深々に見ている。

おそらく、二人の姿を見て、お似合いだな、なんて思っているのだろうと研磨は思っていた。


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