赤いリボンの猫[完結] | ナノ

恐怖感


「不安?」



名前は、研磨の言葉に疑問を持った。

不安とは、どこからくるものなのか、と。


研磨は「うん。」と頷き、口を開く。



「名前は、俺のどこが好き?」

「え…」



どこが好き、と聞かれても困った。
言い切れないほど、好きなところはある。

しかし、突然のことすぎてなんと言っていいのかわからなくなった名前は「う…ん?」と首を傾げて考えた。



その様子を見た研磨が「ごめん。」と謝る。

「何で、謝るの?」と言おうとした時、研磨の言葉が重なった。



「名前が、遠く感じる。」



お昼休み、賑わいを見せる廊下のはずが、名前には音が無いように感じた。

研磨が離れて行ってしまいそうな恐怖感に襲われた名前は何もできなかった。

チャイムが鳴り響く廊下、人がバタバタと行き交う。


お互い無言で、各々の教室に戻った。







『あの、名前さん…?』

「ん?なに?」



放課後、暗い名前に山本が声をかける。
研磨たちはどこかで勉強しているため、名前と山本の二人で勉強に取り組んでいた。


いつもの笑顔と少し違う、違和感を覚えた山本が『研磨と何かあったんすか?』と鋭いとこを突かれた名前は嘘つくことなどできず、へへへと苦笑いをした。



一方、研磨たちは1年生の教室で勉強に励んでいた。



『研磨さん…ここなんすけど…』

「…。」



ノートにある程度解いた数式を研磨に見せるリエーフ。
しかし、研磨は自分のノートに集中している様子。



『?研磨さん?』



不思議に思ったリエーフが研磨に声をかける。
顔をゆっくり上げた研磨。



「ねぇ、リエーフ。」

『はい!なんすか!』



ニコニコといつもと何ら変わりないリエーフを見て、「名前と付き合いたいと思う?」と問いかける。

その質問に隣にいた犬岡がぎょっとした顔を上げた。


リエーフは素直に研磨からの質問に『もちろんっすよ!でもー俺と名前さんじゃ釣り合わないっす。』と項垂れた。



「…バレー部だったら誰と釣り合うの?」と研磨が問いかけた。

犬岡は異様な二人の会話の様子にドキドキハラハラしている。

リエーフは研磨の質問に何も考えず素直に答えていた。



『そりゃ、黒尾さんか、研磨さんか…あー夜久さんもいけますね!』

「ねぇ、それって、どういう基準で言ってる?」

『そりゃ、バレーができて!女性を大切にできそうなー…人っすかね?』

『おれはそのメンバーだと、“何か自信が持てるものを持ってる人”って感じがしますね!』



二人の会話に、犬岡も参戦する。

研磨は二人の言葉を聞いて何か考える様子を見せた。


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