赤いリボンの猫[完結] | ナノ

彼女とは…?


『おーい、バレー部のマネージャーさんよ。』

「ん?」



テスト一週間前に入り、きょうからテスト勉強が始まる。
名前は放課後までに山本のノートを一通り取り上げ、どんな状況なのか目を通していた。


お昼休み、フルーツジュースのパックを片手にそのノートをペラペラと見ていたら、教室に大きな声が響いた。


隣で雑誌に目を通していた結羽が雑誌から目を離し、視線を声の主へ向けた。
その素早さに苦笑いする心。


名前は教室のドアに立ちはだかっている黒尾の姿を見てジュースを置いた。



廊下で立つ黒尾はかなり目立つもので、行き交う女子たちはチラチラと彼を見ては頬をほんのり赤くして去っていく。


そんな姿を見て、じっと黒尾の顔を見つめる名前。



この顔は…かっこいいのかな…うーん…かっこいい…のか?



あまりにも熱い視線を向け続けられている黒尾は『俺のかっこよさに気づいたか?』とキメ顔を向ける。


その瞬間、顔を強張らせた名前を見て、黒尾は『嘘だっつーの。』とため息を一つついた。



『きのう、研磨から聞いたんだけど…お前ら付き合ってないんだって?』

「…は、い?」



質問を聞いて、首を傾げる名前の答えはやはりはっきりしないものであった。
黒尾は『やっぱりか…』と呟くと、彼女と向き合う。




『研磨に聞いても教えてくれねぇから、名前に聞こうと思ってきたんだけど…お前らいつお互いの気持ち知った?』



その質問に、名前は頬をほんのり赤く染める。



「先輩が呼び出されてるときに…」

『…は?』



黒尾はぽかーんと口を微妙な大きさに開き、目は点状態だ。

名前はそんな黒尾を見て「あの黒尾先輩。」と問いかける。



「彼女って…その…好きな人を独り占めできるんですか?」

『…え?』

「いや…なんか、そういう感じのこと…友達が言ってて…」

『あー…まぁ、そうかもな。』



黒尾は名前と正反対に伸びる廊下を見る。



『付き合うって言えば…まぁ…どこにいても、繋がってる感じがして、安心感が得られる、って感じなんじゃねぇの?』



名前は黒尾の相変わらず向け続けられている視線の先を見てみた。


山本とダルそうな研磨の姿。

山本が身振り手振りしながら研磨に何かを必死に訴えているように見える。
しかし、研磨は僅かに眉を動かし、誰が見ても楽しそうな会話をしているようには見えない様子を見せていた。



『お。』

「あ…」



声を出した黒尾に続き、名前も声を出す。

二人の視線の先の二人…山本と研磨の間を割って入ったのは…



『ありゃ、誰だ?女にしては背ぇたけぇな。』

「…小池さんだ。」

『あー、あの子が。』



すらっと細い、スタイルの良い小池は、名前にとってあまり良いようには映っていなかった。


理由は、紛れもなく…



『へぇ、研磨の顔が山本ん時とえらい違いだな。』

「…。」



黒尾の言葉には、誰が聞いても確かであることがわかる。

幼なじみゆえ、様々な研磨の顔を見てきたのは、黒尾だからだ。


名前は黒尾の背に、そっと身を隠した。


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