赤いリボンの猫[完結] | ナノ

黒尾の話


名前を送り、黒尾と研磨の二人で家路につくと黒尾がニヤニヤして研磨を見つめている。


研磨は「何?」と怪訝そうな顔をして問いかける。
黒尾は『いや?別にー?』と何か言いたげな顔を向ける。

研磨は面倒くさくて「そう。」とすんなり黒尾の言葉を受け入れ問い詰めなかった。


予想外の展開に黒尾は慌てた。



『おいおい、何も言わねぇのか。』

「言わないよ。面倒くさい。」



はぁ…と深いため息をつくと、黒尾は気を取り直して自ら発言した。



『…襲うなよ〜?』

「は?」



黒尾の言葉に、さすがの研磨も視線を上げた。



『だって、家だろ?男女が一つ屋根の下ですることっつったら―…』

「クロと一緒にしないで。」

『ん?それはどういうことだ?研磨くんよ。』



分かっていない様子の黒尾に、研磨はため息をつくと口を僅かに開いた。



「クロの頭の中はそういうことしか考えてないでしょ。」

『そりゃお前…健全な高校生男子だ!』

「…もう、うるさい。黙って。」



あー言えばこう言う黒尾に研磨は埒が明かず反論も諦め、ただ黙ってもらうことにした。

だが、それを受け入れるはずのない黒尾は研磨の願い虚しく一人口が走り続ける。



『お前だって、そういうことしたいだろ?』

「…。」

『さっき、抱きしめたくなっただろ?駅で。』

「…。」



その言葉に、研磨は素早く反応を示した。
無視を通すと思っていたら、反応を示した研磨の姿に黒尾も口角を上げる。



「…クロ。なったんだ?」

『えっ…』



鋭いところを突かれた黒尾は、顔を引き攣らせた。
その顔を見れば、研磨は答えを聞かずともわかった。



「…早く彼女作りなよ。」

『彼女取られそうで怖いのか?』

「クロは別に…」

『なんでだよ。』

「…クロより、俺の方がいい。」

『おい…さらっと全てにおいて各上だって言ったぞ、今。』

「…年齢は超えられないけど。」



その最後の研磨の発言に確信を持たされた黒尾は落ち込んだ。



「あ、ねぇ。」

『あ?なに。』



研磨が思い出したように立ち止まり、はっきりした口調で



「さっきも言ってたけど…彼女じゃない、から。」

『……は?研磨、それ本気で言ってんのか?』



「うん。」と小さく呟くように、何らいつもと変わりのない研磨の様子に、黒尾は目を丸くした。


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