赤いリボンの猫[完結] | ナノ

きゅん


その時、研磨は自分の制服が握られるのを感じた。


紛れもなく、隣にいる名前がギュッと握っている。

その姿を見て、黒尾は不思議そうに見つめ、研磨は「どうかした?」と彼女に問いかけた。


名前は、目をギュッと瞑り、口を開く。



「やだ、行ったら…」

『「…。」』



上目遣いでもなければ、計算したような行動でもなく…

その表情は見たことがないほど不安そうに眉を下げる名前の姿。

そんな姿を見せられれば、彼女の素直さは一目瞭然だった。


研磨も黒尾も、不意打ちの可愛さに心を鳴らせた。



「…うん。行かないよ。」



いつも通りのトーンで、でもハッキリとした口調で言った研磨を、名前は見上げた。



「俺…人多いとこ苦手。」



だから、と言って視線を彼女から逸らした研磨は携帯を慣れた手つきで操作し、断りのメッセージを送信した。



「そうだ。今度の日曜日、暇?」

「え?」



携帯をカバンに仕舞うと



「ウチ、おいでよ。クロと勉強する予定だったんだけど…女の子と遊ぶ予定入ったらしくて…」

『おい、詳細は言うな。』



呆れる黒尾を余所に研磨は名前に「予定なくなったから…」と話を続ける。



「たぶん…いつもより一緒にいられると思うよ。」



すぐ視線を逸らした研磨。
名前は、その言葉を聞いて胸が締め付けられる感じがした。



もっと、一緒にいたい。



あの言葉、ちゃんと考えててくれてた。

それだけで、嬉しくて…
やっぱり好きだと実感した名前は、嬉しそうに頷いた。


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