お誘い
『じゃあ、俺リエーフたち教えるから、名前は虎お願い。』
「うん。わかった。」
研磨は隣で頭を抱える黒尾を見て、そう名前に告げた。
黒尾は嬉しそうに『さすが、研磨。』と頭を撫でる。
大人しく撫でられてる研磨を見た名前は僅かに微笑んだ。
「あ、そうだ。」
研磨が駅で思い出したように声を上げた。
それに反応する二人。
「ねぇ、これ、どういう意味だと思う?」
『ん?』
研磨が誰かとしているメッセージを2人に見せた。
『小池…って、あぁ。前話してたな。』
「うん。」
小池と名前が表示されており、その下には顔文字一つない閑散としたメッセージが続いている。
「この、最後の文。」
『“よかったら一緒に行かない?”』
黒尾の読み上げた文に、名前は違和感を覚えた。
「あまり、仲良くない人なの?」
「…名前よりは…というか、名前の次に仲良いくらいの人。』
『女ん中ではな。』
研磨は「これって、2人でってこと?」と首を傾げた。
名前は、黒尾の言葉から相手が女の子だということを知り、昨日3人が話していた会話を思い出した。
−『びっくりしましたよ、研磨さんが女の人と連絡取り合ってるなんて。』−
−『それも同じクラスの女子だからな…』−
−『確かにな…』−
同じクラスの、女の子…小池…。
体育の時間を思い出す名前。
3組の女の子なら会話したことあるかもしれない、そう思って記憶を辿っていたら、一人、印象強かった場面が思い出された。
短距離走で、ストップウォッチを持ってみんなのタイム測ってた人だ。
そうだ、小池さんって…女子バスケ部で、3組の体育委員をしてる人。
私より背が少し高くて…研磨と同じくらいあるはず…女子の中では背が高くて細い、顔は美人。
「名前?」
「うん?」
研磨と黒尾にいつからか見られていたようだ。
我に返った名前は苦笑いをした。
『どこに行くんだ?』
「映画。」
「え…」
それって…つまり…と、名前は顔を強ばらせた。
『デートじゃねぇかよ。』
名前が思っていたことを、いとも簡単に口にした黒尾。
「え?デート?」
研磨は眉間に皺を寄せた。
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