救い
落ち込む二人のフォローは後でするとし、名前は望月に「どういうこと?」と事情を聞いた。
『ボール、苗字に当たりそうだったから、俺が引っ張ったんだよ。』
『よかったな。顔に当たらなくて。』と笑う。
「ありがとう…」とお礼を言うと望月は『それより早く鍵ー』と意地悪な顔を向ける。
ハッとした名前は走って黒尾の元へ向かった。
『研磨ー。気になるだろうけどトスあげろー。』
ジッと二人を見ていた研磨に夜久が声をかける。
その声を機に、研磨は持ったボールを上げ、練習を再開した。
研磨の姿を、遠くから望月が見つめる。
バレーをしている彼の姿を初めて見た望月は「ふーん。」と鼻を鳴らした。
走って鍵を私に来た名前に、『なぁ。アイツ、レギュラーなの?』と問いかける。
名前はアイツ?と首を傾げたが、望月の視線がその者を捕らえていた。
「…研磨のこと?」
『そう。』
「うん。レギュラーというより…メンバーって言うんだよ。バレーでは。」
「研磨はね、うちの司令塔なんだよ。」という名前に望月が『司令塔?』と問いかける。
「うん。黒尾先輩がいつも言うの。研磨は、音駒高校バレー部の“背骨”で“脳”で“心臓”だって。それがいなくなると、うちは機能しない。」
『例えはちょっと、あれだけど…すげぇ奴だってことがわかるな。』
望月は、素直に思ったことを口にした。
その言葉に、名前は「望月もでしょ?エース。」と言う。
『エースでも、アイツに勝てない。なぁ、俺の何がダメ?』
「…え…っと…」
望月は本人に、自分と研磨のどこがそれほど差を生んでいるのだろうか、とずっと気になっていた。
とうとう、名前に聞いてしまったのだ。
本人の反応も、予想通りのもの。
だが、答えは予想できるものではない。
狼狽えている名前の背後から『おい、名前!いつまでイケメンくんと喋ってやがる。部活だぞ!』と声をかけられ、ハッとし、望月から逃げるように「じゃ。じゃあまた!」と体育館の奥へ向かって行った。
望月は黒尾を睨むと部員が待つ体育館へ向かった。
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