赤いリボンの猫[完結] | ナノ

メッセージ


土曜日の朝。
きょうは1日、体育館で練習の日。

名前は欠伸しながら部員たちと同じ真っ赤なジャージ、黒いTシャツ、赤い半パンで学校へ向かっていた。


鞄の中から携帯のメッセージを受信した音が聞こえる。
中から取り出し、メッセージを確認する。

相手は前に友達から『連絡先教えてほしいって言ってて、教えてもいいかな?』と聞かれ、良いよと言った男子からだった。

メッセージを開くと、“白石です。ずっと話はしてたけど、連絡も取りたいな、と思ってて、川上からID教えてもらった。”と言う。


川上は望月と同じくバスケ部の男子であり、望月との繋がりで、仲良くなった人だった。

名前は、“聞いてるよ。でも、何で連絡も取りたいの?”と素直な疑問を彼に返信した。


更衣室へ入り、髪を結ぶとペンとボトル、タオル、バインダーを持ち体育館へ向かおうと更衣室から出た時だった。



『びっくりしましたよ。研磨さんが女の人と連絡取り合ってるなんて…』

『それも同じクラスの女子だからな…』

『確かにな…』



犬岡、黒尾、夜久の3人が研磨の会話をしていた。


男子更衣室からぞろぞろと部員が出てくる中、名前の心はもやもやしていた。



研磨が同じクラスの女の子と、連絡を取り合ってる…?



「…私、研磨の連絡先知らないや…。」



毎日部活で顔を合わせるため、連絡することが今までなかった。
主将の黒尾とは部に入った後すぐに交換する必要があって、交換を行ったが、他の部員とすら連絡は取っていなかった。



少しして、更衣室から誰も出てこないことを確認し終えると、そそくさと体育館へ向かった。

ドアの近くでリエーフと犬岡がボールで遊んでいる。

それを見て「もっと中でしたら?」と声をかけると「うぃっす!」と言う返事と笑顔をリエーフが名前に向ける。


こりゃ、返事だけで終わるな…と苦笑いしたとき、背後から名前を呼ばれ振り返った。



「あれ、望月?」

『おはよ。』

「おはよ…どうしたの?」



バスケ部の練習着姿で現れたイケメン、望月に問いかける名前。
望月は「体育準備室の鍵が今無くなって1個しかないらしくて、バレー部が鍵持ってるって言うからもらいに来たんだけど…」と事情を説明した。



納得した名前は「わかった。黒尾先輩に聞きに行くよ。」と体の方向を変えた時、腕を掴まれた名前はバランスを失った。

そのまま望月に抱えられるような態勢になり、慌てて離れる。



「ご、ごめ…」

『すみません!!』

「え?」



バタバタと駆け寄って来た犬岡とリエーフの姿に名前は固まった。

望月は『もっと中でしろってさっき苗字に言われたところだっただろ。ちゃんと言うこと聞いとけばこういうことにはならないだろ。』と冷静な口調で二人を正した。


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