赤いリボンの猫[完結] | ナノ

行き道


望月と名前が話を終えた頃、黒尾と研磨は先にアップルパイの並ぶパン屋へ向かっていた。

名前が来るからといつもより遅いペースで歩く二人。
そのおかげで研磨はゲームがよく捗っていた。



『名前とアイツ、二人っきりにしてよかったのか?』

「…うん。』

『…好きな女のことを好きな男だぞ?それもイケメン。』



ニヤニヤしながら研磨を見下す黒尾だが、研磨は動じない。



「顔って、重要?」

『お前は重要って言うところだろ?名前だってそこらの女子ん中ではかなり可愛いじゃねぇの。』

「…なんか、クロが言うとムカつく…。」

『それは、好きだからだろ?』



その問いかけに、研磨はゲーム画面から黒尾へ視線を向けて「そういうもんなの?」と問いかける。

黒尾は『そういうもんだろ。』と答えた。



「…ふーん。」



興味があるのか、興味がないのかわからない反応をする研磨に黒尾はため息をついた。



『研磨も意外に面食いだったってことか。』

「名前が可愛いのはそこじゃないよ。」

『はぁ?あれを可愛いと言わないで何て言うんだよ。』

「顔じゃない。中身。」



その言葉を聞いた黒尾はギョッとした顔を研磨に向けた。

研磨はその顔を見た瞬間、彼の口元へ手を持って行った。



『…それって…カラ―…』


「性格。」といつもより大きめの声を出して黒尾に言う研磨は、手を黒尾の口元から離して再びゲームに取り組んだ。


黒尾は自分の言おうとしていた言葉を考え、彼女のことを思い浮かべる。



『…ジャージで思い出せねぇな…』

「思い出さなくていいから。」



そんな男子高校生の会話を繰り広げているところに名前が到着した。


「はぁ…間に合った。」


走って来た様子の彼女はカーディガンの袖を捲り上げた。
黒尾はそんな彼女の姿をジッと見つめる。



『…。』

「クロ。」



研磨が黒尾を呼び、その視線は逸らされた。



「?」



何のことかさっぱりわからない名前は首を傾げた。


[ 52 / 110 ]
prev | list | next

しおりを挟む