赤いリボンの猫[完結] | ナノ

好きなところ


名前は彼のお誘いに「行きたい!…でも、正直今はそれどころじゃないかな…」と苦笑いする。



『忙しいのか?』と望月が首を傾げた。


その質問に、名前は「うん。インターハイ予選がもうすぐだから…」と答える。
すっかり名前はバレー部のマネージャーの顔をしていた。



『苗字にずっと聞きたいと思ってたんだけど…』

「うん?何?」



望月が俯き加減に問いかける。



『好きな奴、いる?』



その問いかけを聞いた瞬間、名前はただ一人を思い出して顔をほんのり赤くし、微笑んだ。
望月ははじめて見た彼女の表情に視線を逸らした。



「うん。いるよ。」

『へぇー。どこが好きなの?』



望月は、聞きたくなかった。
でも、聞いてしまう。

ずっと、好きだった人を簡単に振り向かせた相手と自分を比べるためだった。



「うーん…そうだなぁ…」



名前は、研磨のことを改めて思い出す。

ゲーム好きで、猫見たいに可愛くて、素直で、優しい…


でも、バレーをしてる時はチームの軸。
メンバーと疎遠な感じがするけど、全く逆、よく見て、よく知ってる。



「カッコいい。」

『え?カッコいい?』



望月の聞き直しに、うん、と頷く名前は、「カッコいい人だよ。」と返事した。



『ふーん。』



望月は、よくわかんねぇな…と思いながら彼女を見ていると「ねぇ、望月は?」と笑顔で問いかけてきた。



『え?』

「好きな人!いないの?」



望月は目の前の彼女に『わざと言わそうとしてる?』と口角を上げて見せた。



「あ…」



彼の言葉を聞いて、名前は忘れていたことを思い出した。
この前、研磨に望月は名前のことが好きだと思う、と言われたことを…。



「あ、えっと…そろそろ、行くね?」



無理矢理、話を終わらせた名前に望月はふっと笑い『おー。』と手を上げる。


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