赤いリボンの猫[完結] | ナノ

新幹線


帰りの新幹線の中で、部員たちはさすがに疲れた様でみんなスヤスヤ眠っていた。
研磨はゲームをしており、窓際には黒尾が眠っている。

隣に座る黒尾の顔を見るなり、少し口角を上げると再びゲーム画面に視線を落とした。


そんな頃、彼らの前の席に座る名前は真っ赤なジャージを着て、自分のリュックを抱きしめながら眠っていた。



『もうすぐ着くぞー』



黒尾の声に部員の大半が目を覚まし、ボーっとする。
黒尾の前に座る名前は爆睡しており、寝たままだ。


研磨が立ち上がって荷物を取った後、視界に名前が入った。



「…名前。もうすぐ着くよ。」

「ん…」



前の席へ行き、彼女の肩を揺らす研磨。
薄っすら目を開いた彼女はパチパチと数回瞬きをすると研磨を見た。



「研磨、おはよ…」

「うん。でも、もう真っ暗だよ。」

「うん…」



目を瞑り、頷く名前の顔を覗き込む研磨。
目を開けば研磨が視界いっぱいにいたことに、言葉を失う。



「っ…」

「傷、どれくらいで治るって?」

「え…あ…すぐ治るって…」



寝起きの頭で、研磨からの問いかけに必死に答える。

その答えを聞いた研磨は「そう。」とだけ言って自席へ戻った。



心配、してくれてる。



そう思うだけで、名前は心が温かくなるのを感じていた。



新幹線を下りるなり、もう時間が遅いため東京駅で解散となった。
くわぁと欠伸をしながら各々帰路につく部員たち。


名前も同じように欠伸をしながら乗り換える電車の改札へ向かう。



『名前。』

「はい。」



声をかけられた方には黒尾と研磨の姿があった。
黒尾が『途中まで一緒だろ?』ということで、一緒に帰ることになった。

電車の中では、会話はなく研磨を間に名前と黒尾が座っている。

二人とも、ウトウトと首を揺らしており、気づいた時には二人とも研磨の肩を借りて寝ていた。


研磨は眉間に深い皺を寄せながら「重い…」と一人呟いた。


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