赤いリボンの猫[完結] | ナノ

好き


名前が出て行った瞬間、夜久たち部員は研磨に身を寄せた。
山本が手からゲームを奪い取ると、研磨が「何?」と眉間に皺を寄せる。



『いつからだ?』

「?」



夜久の問いかけに相変わらず眉間に皺を寄せている研磨。
『あー、わかった。ハッキリ聞いてやる。』と夜久がヒレを切らした。



『苗字のこといつから好きなんだ?』

「え?」


きょとんとする研磨。



『恍けたって無駄だぞ!あんなこと平気で言うなんて…!』と山本。
それを聞いた夜久が『待てよ…平気で言えるってことは案外気になってないのかも…。』と言い出す。


それを黙って聞いていた研磨は「いつからかわからない…」と声を発し、それにみんなが注目した。



「でも、好きだよ。」



研磨が視線を落とし、小さな声で言った。

その様子を見た犬岡が『なんか、研磨さんが…可愛いっす。』と男らしからぬことを言い出し、夜久が『馬鹿か。研磨だぞ。』と呆れる。



『いや…俺もちょっときゅんとした。』

『ですよね?俺変じゃないっすよね?』



山本と犬岡がなぜか興奮気味に同感だと言う。
夜久は『馬鹿ばっかりだ…』と呆れた。



そこへ黒尾が帰って来た。
研磨の周りに集まっている彼らを見た瞬間、『楽しそうだな。』と言った黒尾。

呑気に集まりに歩み寄る彼を隣へ座らせたのは、夜久だった。



そして、今度は黒尾の周りに部員が集まる。
帰ってきて早々、部員に囲まれた黒尾の顔は引きつっていた。



『あ?なんだ?』

『黒尾、お前に聞きてぇことがある。』

『お、おう。答えれることならいいぞ…』



黒尾の返事に、身を下した部員たち。
夜久が代表となって彼に問いかけた。



『お前は研磨が苗字のこと好きだって知ってたのか?』

『え…』



黒尾は先ほど取り上げられたゲームを手にして指を動かしている研磨に視線を向けて『おい、研磨。お前何バラしてんだよ。』と声をかける。


研磨は「バラしてないよ。聞かれたから答えただけ。」と返事をする。


その返事に、黒尾は、はぁ?と呆れた。
取り囲む部員たちに視線を戻した黒尾は、はぁ…とため息を零したあと、『お前ら何て聞いたんだ?』と問いかける。



『聞いたもなにも…研磨が“名前は可愛いよ”って言ったのを聞いたから…俺たち驚いた。』

『研磨の言葉に深い意味はねぇーよ。』

『え、でも、好きだって言いましたよ?研磨。』



山本の発言に『はぁ?!』と黒尾は声を上げた。
研磨の顔が歪む。



『ちょっと待て、この前は“好きかもしれない”だったよな?』

「うるさい、クロ。」

『えぇっまじかよ…』



黒尾の信じられないという顔に、みんなが『黒尾も知らなかったのか?』と問いかける。



『研磨、気づいたのか…じゃあ、俺たちは見守るだけだな。』

『でも、名前さんは…?』


山本の言葉に、黒尾は『ま、どーにかなるんじゃねぇの?』と呑気な事を言った。


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