赤いリボンの猫[完結] | ナノ

宿舎


「ふわぁ…みんなより動いてないのに眠たい…」


一人女子なので部屋にいるのもつまらなくなった彼女は階段を下りて男子たちがいる部屋へ向かっていた。


角を曲がったとき、誰かの体とぶつかりそうになりお互い足を止めた。

見上げれば、知らない人。



「あ、…すみません。」


そう言って通り過ぎようとしたとき、手を掴まれた。

「え。」と振り返った名前の先にはやはり先ほどぶつかりかけた人。


「あの…」

『いや、お前いつまで俺を他人扱いするんだ。』

「く…黒尾先輩?!」



呆れた声を聞いて驚いた。
髪がお風呂に入ったからかぺしゃんこになっているので誰かわからなかったのだ。



『いやっ気づけよ!』

「む、無理です!…その髪はせこいですね。」

『どういう意味かなぁ…名前ちゃん?』


と黒尾と会話していたところにお風呂から帰って来た2年生集団が黒尾に声をかける。



『黒尾さん、1年次入れさせていいっすか?』

『おう、頼むわ。俺ちょっと監督に呼ばれてっから。』

「え…クロまた何かしたの…」

「また?」

『やめろ、嘘言うな。名前に誤解されるだろうが。』

「…名前、おいで。」



首にタオルをかけて、髪からまだ雫がポタポタと落ちている研磨が彼女の姿を見て笑みを浮かべた。

可愛い…それも、おいで…って…。


きゅん、とした名前を見て黒尾が『研磨に惚れたら大変だぞ?』と耳打ちする。


それに少し腹が立った名前は黒尾に『黒尾先輩の方が危険で大変そうです。』と言い返し研磨の後を追った。


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