赤いリボンの猫[完結] | ナノ

萌え


幸い唇からの出血で縫合するほどではないとのこと。
鼻とばかり思っており、口は押さえていなかったため出血し放題状態だったことから血が伝ったと考えられた。


でも、乾燥しているとパックリと再び傷口が開くため念入りにケアが必要だと保健室の先生に言われた。


他校まで来て…保健室の先生にお世話になるなんて…それも部員じゃなくてマネージャーが…。



現在、音駒高校バレー部は、明日烏野高校との練習試合を控えている。
その他にも練習試合を組んでおり、今日はその学校との試合を行うためにこの学校に来たのだが…



なんてみっともない…バレー部に申し訳ない。

と体育館へ一人戻っていると、相手校の部員とみられる背の高い可愛い男の子とすれ違った。

目が合い、ペコっと頭を下げた名前に『あのっ』と声をかけた。

可愛い男の子は、どうやら名前の可愛さに惹かれたようだ。
顔をほんのり赤くし、『音駒高校のマネージャーさんですか?』と問いかけた。



名前は自分の羽織っているジャージを見て「あぁ。ジャージですか。」と笑顔を見せる。


研磨が先ほど羽織っていたのだが、黒尾に脱がされ、ポイッとコートの外へ無造作に投げつけられたそれを名前が拾ったところ黒尾が『あ、お前ソレ着とけ。』と指示され仕方なく着ている。



まぁ…研磨のだからあまり大きくないし…彼シャツならぬ“彼ジャージ”とまではいかない。

でも、研磨、嫌な顔一つせず練習再開してたなぁ…
あの人は、誰にでもそうなのだろうか…?



なんて、研磨のことばかり考えていたら先ほど見せた名前の笑顔にやられたようで、可愛い男の子は『あの、お名前なんて言うんですか?』と聞いた。



「え…名前ですか?」と息を吸った瞬間、口元を手で塞がれた。


「言っちゃダメだから。」

『うちのマネージャーに何か用ですか?』



研磨と黒尾の登場だ。

「ここはクロに任せる。」と腕を掴まれ体育館の中へ入っていく研磨についていく。



『え、どした?』

「あっちの学校の人に声かけられてた。」

『はぁ?ジャージの意味なくねぇか?』



ボトルを片手に夜久が二人を見て首を傾げた。
研磨の話を聞き、怪訝そうな顔をした夜久。
名前は「どういうこと?」と研磨に問いかける。



『黒尾は、苗字が他校のやつに目ぇつけられねぇように、研磨のジャージ着させたんだよ。』


『でも…そうだな…腕捲るな。』ボトルを持つ手で名前の袖を指さす夜久。
素直に名前は袖を下す。

手の指先しか見えていない。


その姿を見た研磨以外の部員の心の中は一致していた。



萌え…ってやつだ。



結局袖を捲って動くことになった名前だった。


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