赤いリボンの猫[完結] | ナノ

おかしい


“研磨は、ヤキモチやいてる”


のでは、ないのか。
という結論に、名前が考えた結果ではなった。

でも、なったところで研磨の気持ちはわかったが…本人もわかっているとおり、マネージャーをしている限り、他の男子に触れられることは避けられない。

友達にだって、ボディタッチくらいある。


…でも、私も、嫌かもしれない…研磨は、女子と関わってるところあんまりみないから感じた事ないだけかもしれない…。



『あっ…すみま―…!』

『おいっ名前!!』

「!!」


ボーっとベンチに座りながら考えていた結果、見事に顔面にボールが当たった。


「いっ…っ…」



顔面の全体的に痛むが特に痛いのは鼻だ。
ボールが足元を転がっていく。
目をうっすら開くと、視界はしっかり鮮明に見えていた。



目の前にバタバタと駆け寄って来た部員たち、心配そうな顔をして覗き込むが、名前は鼻に軽く手を当てながら「大丈夫!私がボーっとしてたからだから…」と言うがみんな心配そうに眉を下げている。



『運動神経抜群なくせに…こんな時に活用しねぇでどうすんだ。』と黒尾が口角を上げて憎たらしい顔を向ける。

その顔を見てムッとする名前だが、タラッと手の甲を何かが伝っていく感覚がして視線を向けた。



その瞬間、部員が大騒ぎ。



『おい、名前が血流してるぞ…』

『名前さん!すみませんっ俺のせいでっ大丈夫っすか?!』

『うちの大事なマネジがぁああ…』



そんな中、ボールを片手にしていた研磨が平然とした顔で名前に近づくなり「ん。」とティッシュを手渡した。



「ありがと…」



受け取るなりとりあえず鼻をつまんでおかないと…と思った時、研磨が「見せて。」と何とも信じられない言葉を発した。

名前は固まった。



「…見せれるわけないよ。研磨くん。」



目が点になるとは、こういうことを言うのだろうか?
何を考えているのだろうか、女の子が好きな男の子に鼻の穴を見せろと?

待って…好きな男の子?違うでしょ。


パニックになり始めた名前の頭の中とは裏腹に、言葉は落ち着いていた。



「見せて。」

「やだよ…なんで…?」

「ボールで顔に傷ついたのかもしれない。」



その研磨の言葉を聞いた周りの部員たちは再び騒ぎ立てる。


『おまっ…女だぞ!!顔に傷なんて…!』とうるさい中、研磨が「クロが言ってる通りだから。」と促される。


そういう理由なら仕方ない…と手を退けると研磨の細く長い綺麗な指が顔に添えられた。
思わずビクッと身を震わせてしまう名前は、恥ずかしくてギュッと目を瞑った。


研磨はその無防備な姿にドキッとした。
パッと手を放し、目を開けた名前に「切れてる。口。」と伝えた。


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